禁断のパンダ/拓未司


禁断のパンダ

禁断のパンダ


久しぶりすぎて、自分で驚きました。ほぼ一年ぶりです。
どうしても感想が書きたくなったので。
※ 直接的なネタバレはありませんが、勘のいい人だとわかってしまう可能性があります。



「天才料理人」×「究極の美食」。さて、材料は?
この話を読んでから、片っ端から人に聞いています。一番和んだ答えは「卵とお米(炒飯)」でした。
さて、物語は、新進気鋭のフレンチ料理人が、妻と一緒に友人の結婚式に招待されるところからはじまります。
おそらく、目玉のひとつであろう料理の描写は「あぁ、おいしそう」というよりも「すごそー」です。
専門用語が多く、特別な感じが出てて面白いですが、実際的な味の想像は難しいです(フレンチを食べ慣れていたら別かも)。料理漫画の唐突にはじまる饒舌なセリフと似てました。調理場面はスピード感と緊張感があっていい感じ。
表紙のせいか、題名のせいか、日常推理系のほのぼのかな、と思っていたのですが、見事に期待を裏切られました。うん、ほのぼの系にしては文体が妙に固いな、とは思ったんです。
読みやすいですが、調理場面を離れると少々臨場感が足りません。私がダレて読んだせいもあるでしょうが、少々状況把握がわかりにくい。人も死にますが「あ、死んだんだ」と五行進んで理解するって感じでした。あっさりです。
そして、話の筋なのですが。うん。切なかった。話が切ないんじゃなくて私が切なかった。上の数式が出来上がった時に、話の最後までわかってしまった。自分の読書経験が恨めしい。ミステリーを読んでて何となく先が読めてしまう、ということはありますが、ここまで当たってしまうと、もう……。
素直に驚きたかった。素直にドキドキしたかった。
なので、ミスリードもなく、親切設計です。ちょっと強引な設定かな、と思いますが、描き方がうまいせいか気になりません。あのシェフはいい性格してる。素敵。
大筋であるミステリー部分が切なすぎたので、色眼鏡じゃない評価ができませんが、王道に近い、正しいミステリー。
驚くべきことに続編があるので、読んでみようと思います。この話で、どうやって続けるんだ……。