とっても不幸な幸運/畠中恵


とっても不幸な幸運

とっても不幸な幸運

しゃばけ」などの時代ものでおなじみの作家さんの、現代もの。

「百万の手」という現代ものがありましたが、そちらはみんなでわいわい、が無くて寂しかった思いがあります(面白かったですよ)でも、今回は…、ふふふ。



舞台は「酒場」。そして、個性溢れる常連客!さらに個性たっぷりの店長!

これで楽しくないはずが無い。しかも連作短編集!

百円ショップで売っている「とっても不幸な幸運」という缶を買い、開けたことが一編一編の出発点となります。

そりゃぁ、個性溢れる常連客が何もないはずがない。そして、登場人物に何もないわけない。

最初は結構普通の店長の娘「のり子」からはじめるのだけど、先に進むにつれて、「酒場」らしい話に変化していきます。

個性豊かな人には、個性豊かな過去があるんだな、ってこと。ウェイターはちょっと別。

新鮮だったのは、「しゃばけ」シリーズとは違って、常連客たちや店長の関係が決して、優しさだけで構成されていないこと。

何かあるたびに賭けをはじめるし、皆でギャアギャア憶測を飛ばし、人の話を聞かない。

店長も、自分の都合の悪いことはけろり、と忘れる。

あくが強い、って言葉がピッタリですよ。

そのくせ、何だか仲良くて「酒場」で騒いでいる光景が目に浮かんでくる。

死が関わってくる話があるのですが、その話だけがこの人の話には滅多にない、感情の生々しさを感じました。みんなでわいわい、ということでは「しゃばけ」と同じ雰囲気はあるけれど、まったくの別物でもあります。

話がきれいにまとまっていて、もし続編が出るのなら(でも望みは薄そうだなぁ…)もっと、ギャアギャアした話を期待します♪