子どもの王様/殊能将之


子どもの王様 (ミステリーランド)

子どもの王様 (ミステリーランド)

ハサミ男を書いた人のミステリーランド。さて、ハサミ男の歪みっぷりは出てくるのか…。


うわ。

ミステリーランド、と名前をつけられていますが、これはミステリーじゃないと思います。

今まで読んだ二冊と違って、事件が起きてそれを解決するため数人の少年少女が推理する、という話じゃないのです。

主人公である少年は大体において一人で行動し、一人でものを考えます。

孤独というわけではありません。学校に行ったら友達を遊んでいますし、母親(名前で呼ぶ)とも会話をします。

俗悪番組(と本の中で評されている、ゲーム→罰ゲームな流れの番組)を見て笑ったり、それの真似をしたり、ヒーローに傾倒したり、などのことをしています。

それが、リアルなんです。

今まで読んだ二冊の本は大人が眉をひそめそうな描写がありませんでした。いや、大人に黙って、とか大人を欺いて、とかはあったけれど、謎に関わらない日常生活の中ではなかったので。

そういうものがリアルで、妙に現実感がある。そして、歪んでるように思える。

この話、明るさがないんです。

主人公が基本的に一人で行動するせいもあるかもしれませんが、明るさがない。

ネタバレになるのでかけませんが、様々な問題が出てくるし、主人公は今時の少年らしく歪んでるし、要となる友達はひたすら脅えてるし。

あ、最初にミステリーじゃないといったのは、最初からすべてが見えたためです。どんでん返しもありませんし。

けれど、ハサミ男なみに歪んでますよ。

児童文学ということで、その歪みに手を抜かないのは、面白かったです。