薔薇の木 枇巴の木 檸檬の木/江國香織


薔薇の木 枇杷の木 檸檬の木

薔薇の木 枇杷の木 檸檬の木


某有名古本屋で安かったのを買ってきて、そのまま放置していたのですが、やっと読みました。
この人の本は「なつのひかり」を読んで、わけのわからなさに混乱してから遠のけていたのですが、今回は私がわかる「わけのわからなさ」でしたよ。


まるで、いつまでも続いていきそうな話だな、と思った。
断片的な妻たち?の日常を、淡々と描きつつ、確実にそれが変わっていく描写は、すんなりと受け入れられ、ふと振り返ったときに「あれ?」と違和感を覚えるほど自然でした。
様々な人の、私から見ると無作為に選んだ順に描かれる日常は、少々覗き趣味かもしれない…。読んでいる人は、すべてを知ることができる。無作為としか思えないけれど、その人物が何を思い、何を考え、どういうふうに出来事を見るのか、あまり直接的に語らずに伝えてくるこの人は、本当にすごいと思う。(「なつのひかり」はわからなかったけれど…)
微かに繋がりのある人々が、最初からばんばん登場するので、(しかも一人称に近い語り)最初の数ページ読んだときは「ぜってぇ、全員覚えられない」と思ったが、まったく混同せずに読めてしまった。
それどころか、その人物をとおしてこの本の世界を見ることも出来た。
色々な考えがあるものだなぁ、と思いもするし、こいつ何考えてるかわかんない、と思うこともあった。(勿論、その「わからない人」の視点もあるのだけれど)
最初に言ったとおり、いつまでも続いていきそうな話だな、と思いました。
まるで、人生のように。
おそらく、私はこの登場人物たちが実際にいる、といわれてもまったく驚かないだろう、と思う。
同じように、続編が出ても、まったく驚かないと思う。そう思うと、完結してない話のようだ、ということかもしれない。
結局は「江國香織だなぁ」ですまされてしまうのかもしれないなぁ。
きっと、読み直せば、登場人物のことがわかっているだけ、さらに楽しくなるだろう。
人生を、覗いているようなものだから。


メモ: 衿と桜子とクロと道子さんが好きだ。 土屋は…わからない。