群青の夜の羽毛布/山本文緒


群青の夜の羽毛布 (幻冬舎文庫)

群青の夜の羽毛布 (幻冬舎文庫)

この人の長編小説って「恋愛中毒」の他にあったんだ。といそいそ買ってきた本です。


恋愛小説を書く女流作家で、私が抵抗なく読める数少ない人。
短編小説ばかり読んでいましたが、長編も結構好みなことがわかりました。
今度は家族愛をテーマにしているせいか、恋愛の描写は少ない…のかな。いや、普通の恋愛の描写が少ないのか。とりあえず、話の中身は大変そうです。
今まで短編小説ばかり読んでたせいか、読み進めるうちに何度も作者の名前を確認しましたよ。
同姓同名?え?いやでも、プロフィールには「恋愛中毒」の文字も見えるし…。
それくらい、どっぷりと泥のような感触のある話でした。ついでに、ミステリーも味も。
徹底的な不幸が、この本に書かれている日常に溶け込んでいます。
でも、ふと省みて、この話が実際にあったらと思うと、背筋がぞくりとしますよ、ぞくり、と。
合間に入る先生相手に話す誰かの独白も、不気味さと哀しさを感じさせます。誰の独白かわからないので、謎の風味があります。
この人の本を抵抗なく読めていたのは、こういう本を書ける人だったからなんだろうなぁ、と納得。
今まで恋愛小説を苦手としていた方、このミステリーなのか恋愛小説なのか、判断のつきにくい一冊で読み始めてはいかがでしょうか?