くますけと一緒に/新井素子


くますけと一緒に (新潮文庫)

くますけと一緒に (新潮文庫)


この作者さんの本を調べた時、次に読むのは絶対にこれにしようと思っていました。ただ、残念なことに上記で表示してある新潮文庫版を手に入れることが出来ず、私が読んだのは図書館にあった大陸書房が出してる版です。あ、解説が読んでみたなかっただけなんで、内容に変化はないはずです。




さて、この話は初っ端に両親が死にます。

両親は交通事故で死に、主人公である成美は母親の親友、裕子に引き取られます。

ただ、成美にはどうしても熊のぬいぐるみ(くますけ)を手放しません。どこに行くのも一緒。両親が死んだことより、くますけと離されることで泣く女の子なのです。それだけならおかしくはありません。ただ、成美はもう小学四年生。

しかも、そのぬいぐるみ、くますけと会話も出来ます。むしろ、くますけが世界で一番好きな様子です。

この物語は、ファンタジーとして読むべきかな、と私は思いました。落とし方といい、流れる雰囲気といい。

この作者さんの本は二冊目なのですが、どちらにも共通して幸せとはかけ離れた状況なのに、どこかからりとした明るさがありますね。文体がライトな感じがするため、かな。

さて、そんなんで逞しい女性、裕子さんに育てられることになった成美に、ある日恐ろしい思いが襲い掛かってきます。

くますけが、両親を殺したのではないか。

ここでホラーっぽくなるはずなのですが、えぇ、すみません。ホラーに関する感性が低い私では、少しドキドキするくらいでした。

それよりも、最後らへんでの親子(仮)喧嘩がほのぼのして、心が暖かくなりました。

むしろ、最後のエピローグで火花がバチバチ飛ぶあたりも、少しは怖がっていいはずなのに、何だかとても暖かい。

ぬいぐるみだからこその愛情があるとすれば、きっとこういう周りを見ない愛し方を持ち主に対して抱くんだろうな、と思います。

それは怖いものだけど、同時に持ち主にしてはすごく嬉しい。久しぶりにあの子達(私のぬいぐるみ)を撫ぜたいと思えるお話でした。