BG、あるいは死せるカイニス/石持浅海


BG、あるいは死せるカイニス (ミステリ・フロンティア)

BG、あるいは死せるカイニス (ミステリ・フロンティア)


感想をはじめる前にひとつ、猫の地球儀読むって言ったのはどこのどいつだ。すみません、なぜか別の本を読み始めちゃいました…。

一番頭の中にあるのは猫の地球儀なんですが…ね。早くしないと忘れてしまいそうな、自分がちょっと怖いです。




さて、猫のことはひとまず置いといて、この話は設定が特殊です。

人間は必ず、女性として生まれ、その後、男性に変化する社会です。男性は人数が少ない分、優遇されています。

で、女子高(というか、若者は女子しかいない)で、主人公の姉であり、男性化候補筆頭だった女性が殺されたところから、話ははじまります。

そして、殺された姉が言っていた謎の言葉「BG」とそれに関することに主人公は怒りの感情で立ち向かいます。

もう、強い女性が大好きな私としては嬉しい限り。主人公のこと持ち上げすぎじゃないかなぁ、と思うところもありましたが、読み終わってみるといいバランスでした。

女子高(?)であるがゆえに恋愛話にとんと縁がないところも、私の好みですね。

一応、ミステリーには分類したけれど、この話、別に証拠集めはありません。ひたすらに、人の話を聞くことで、主人公が考えをめぐらせるのです。しかも、その「話を聞く」という作業に、学生らしい試験やら部活やらの兼ね合いが絡んでくるのが、ちょっと新鮮で楽しかったです。そうそう、探偵じゃない、学生ってのは色々と気を使わなければいけないんだよね、と。

で、話を聞いたことにより、主人公は考えます。基本的に、推理は言葉尻を捕らえていく感じに進むので、何というか…、作者はこの話を書くのにかなり神経を使っただろうなぁ、と思いました。仮説に仮説を重ねていく推理の仕方って、あまり好きではないのだけれど、この主人公の推理っぷりは好きでしたね。だって、かっこいいんです。

細かいところで「ん?」と首を傾げましたが、それは私がこの本を騒がしい場所などで読んで、集中がこと細かくきれたためだと思われます。

それにしても、主人公、普通にこのまま探偵として活躍してほしかったなぁ…。ただ、きれいに完結してるので、可能性はないでしょうが…。

話の筋としても、特殊な設定を生かしきっているので、満足です。出てくる人々の個性や、間の取り方とか、いいバランスに書かれているお話だと思います。

逞しい女の子が好きで、特殊な設定が好きで、学園ものが好きな方。けっこう、おすすめです。



以下、ネタバレ警報(レベル:最大)

首を「ん?」と傾げたのは、とある病気の死亡率について。致死率90%のはずなんだけど…主人公は途中で「大丈夫」って言われてるし、よくわからないんですよ。

どうも、この病気に関して、理解が及ばなかったなぁ…。違和感がずっとつきまとうんです。かなりの重病なはずなのに、あまりにあっさり主人公が生還したせいでしょうか。

うーん…、この病がもっと「重病だ重病だ」言われてれば、違ったかもしれません。(ただ、そうなると話のバランス崩れるかも…)

まぁ、細かいことです。忘れようと思えば忘れられることなので、面白さに変わりはないです。

ネタバレ終了