祈祷師の娘/中脇初枝


祈祷師の娘 (福音館創作童話シリーズ)

祈祷師の娘 (福音館創作童話シリーズ)


ここ3日ばかし古本屋で大量に漫画を買い込んで幸せを満喫したり、久しぶりにゲームをやって攻略本を隅から隅まで読んだりしていたので、小説は暫く読まないだろうなぁ…と思っていたのですが。




読む時間が短くてすむ児童文学は、こういう時、とても嬉しい存在です。

ただ、この話、児童文学でくくってしまっていいのかなぁ、と少し思いますね。姉は「暗い」と言いました。

うん、希望とかを追っている話じゃないんで、キラキラした感じ、ゼロです。

主人公は中学一年生。おかあさんは祈祷師をやっています。本当の母親でない上に、父親とも姉とも血が繋がっていなかったりと複雑な家庭環境なのですが、このことに関してあまり気にしているような素振りはありません。そして、家で祈祷をやっていることも、祈祷師になりたい、とは思っても嫌とは全然思っていない様子。

ただ、そのかわりに、どうも中学一年生らしい明るさが無いんです。正確に言うならば、よく小説の中に登場する悩んだりしながらも云々、みたいな清潔感がない。

勿論、友人にはそういう子がいて、揉め事があって、気になる男子がいて、と基礎は揃っているんですが…、主人子はそういうことを淡々と受け流している感じがしました。

この淡々さ加減、他のことにも適用されています。

やたらサワリを拾ってくる女の子や、その両親。馬鹿でかくなった金魚と、祈祷師の素質のある姉。読み終わった後振り返ると結構騒がしいものなのだけど、主人公はそれを受け入れていきます。

この主人公の性格、かなり微妙なさじ加減で成り立っているように思えます。

帯に「春永(主人公のこと)の自立の物語」と書いてありましたが、どうもこの主人公、奥の底で最初っから自立していたようにしか思えません。

それでも、起伏がないように思えて、ちゃんとあります。

んでもって、様々な事柄がバランスよく設置されているお話です。どこか面白かったとか、ここがいい、とかそういう意見が分かれそうな作品だなぁ。

どんな人に向いている話かさっぱり見当がつかないのだけれど、祈祷師に関わる話なので、そういうのが好きな人にはいいかもしれません。




でも、これ、児童文学なのかなぁ…。ミステリーランドのように児童文学だ!みたいな感じがあまりしないんですけど…。とりあえず、ルビはきちんと振ってありました。

でも、この本とか「子どもの王様」とか「神様ゲーム」とか、読んで育つ子供は…一体どんな風になるんでしょう、ちょっと不安です…。