蒲公英草子-常野物語-/恩田陸


蒲公英草紙 常野物語 (常野物語)

蒲公英草紙 常野物語 (常野物語)


恩田陸は発刊スピードが速すぎて、ついていけないのですが、このシリーズだけは何があろうと食らいついていこうと思います。




前作「光の帝国」は短編集で、不思議な能力を持つ「常野」の人々を描いた作品でした。恩田陸の中で、一二を争うほどに私の好きな作品です。

で、今回は「光の帝国」の一話目に出てきた家族の、祖先が関わっているお話。時代は大正ぐらいでしょうか。(自信はないです…歴史はさっぱりです…)

医者の娘である「峰子」は村の領主である槙村家のお嬢様「聡子」の話相手になってもらえないかと言われ、屋敷に出入りすることになります。

意地悪な槙村家の子供「廣隆」や、奇妙な発明を続ける「池端先生」など、様々な面々が峰子を取り囲んでいます。

すべて峰子の一人称で語られ、「旦那様」「お嬢様」「○○様」などの単語が頻出するため、静かで時代がかった雰囲気がいい感じです。ゆっくりと時間が流れて、峰子が傍観者であろうとするあたりが、好みです。

半分ぐらいでやっと常野の人々が屋敷を訪れ、滞在することになります。んー、光の帝国をい読んでいなければ、ミステリアスな雰囲気にきっとわくわくするでしょう。私は彼らの能力を知っているので「うんうん、そうそう」と微笑ましい気分が先に立ちます。

最後で波乱があって、あ、これで終わるんだなぁ、恩田陸にしては結構普通の話(褒めてます)だったなぁ、と思いました…が、うん、すごい。

最後の少しのページで、これほど話のもつ雰囲気を変えてしまう作家さんって、ほかにいるんでしょうか。あ、どんでん返しとかじゃないですよ、ミステリーじゃないですから。

恩田陸って作家さんは、どんな話であろうとも独特な味を残しますね。しみじみと痛感しました。この癖のありようは、本当に、すごい。

しっかりと完結しているので、この話から読みはじめても問題ないですよ。

常野をシリーズとするなら、あの人とかあの人とか、あの能力とか、気になる種が蒔かれているので、今後の展開に期待しますよ。「エンド・ゲーム」も読まなくちゃ。



ただ、唯一文句を言うのならば、装丁ですね。いえ、正確に言えば、文字の位置。

章の題名とページ数が、この本は縦に差入されていましてね、その位置が、すっごく微妙なんです。しかも、縦にあるものだから、一ページ読み終わると目がそっちにいってしまうんです。そりゃ、暫くしたら慣れて見なくなりましたけど…、そんなことで集中を欠くのって、勿体ないじゃないですか。上下の空白がたっぷりあるのだからさぁ…。

以上、本文に関係ない感想でした。