女子大生会計士の事件簿-DX.1 ベンチャーの王子様-/山田真哉



けっこう有名な本みたいですね。あとがきに作り方としては「ビジネス書」との通り、中身はシンプルです。ただ、売り出し方は「文芸書」。奇妙な合間の、連作短編集です。




女子大生会計士の「藤原萌実」と入社一年目の新米会計士「柿本」(でも萌美より年上)が、様々な会社の事件を解決していきます。裏金問題に、粉飾決算。会社乗っ取りに、いきなりの大赤字。

てっきり、小説との形をとった、説明ばかりの教科書っぽい作り方をしているかと思いましたが、しっかりライトな感じの短編集でした。

萌美さんが逞しく可愛らしく、相方の柿本さんも、丁度いい感じに情けなくて、いいコンビ。「超ビジネス・ミステリ」との通り、分からない単語もありますが、ちゃんと註が降ってあって、その説明もわかりやすかったです。まぁ、ただ、頻繁に見るので、出来ることなら本の最後にまとめてあってほしかったかなぁ…。一々探すのが面倒なので。

推理途中は、会計のことを知りつつ流れていったりするので、どうなるのかなぁ、と思って、解決すると「あぁ、なるほど」じゃなくて「へぇ、そういう方法がだったんだぁ」でした。文章がシンプルなので、読みやすくはありますが、ちょっと物足りなさは残りますね。かといって、完全に事件の仕組みを理解できていない。何度か読み返さないと勉強したことにはなりそうにないです。わかりやすくはあるんだろうけどなぁ…。

しかし、この話、決着のつけかたがベッタベタで、逆に新鮮でした。たこやき事件とか、プリンス事件とか、一直線で、いやぁ、驚いた。ちょっと、人物も一直線すぎやしないかと思いはしますが…「ビジネス書」ですから、細かいところを突っ込んじゃいけないんだと思います。だって、萌美さんだって、別に大学生である必要はないんですよ。学校生活についてまったくふれられませんから。ただ、キャラ作りとして、そういうことになっているんです。

事件そのものも面白く、興味をそそられます。あと、題名がかわいい。お気に入りは「かぐや姫を追いかけて」。

続編もあるそうなのですが…確かに、登場人物たちはそれなりに気に入りはしましたが…一巻の時点でいまいち事件の全容がつかめていないようじゃ、ついていけなくなるかもなぁ。読み直して、しっかり勉強するのが先になりそうです。