暗黒童話/乙一


暗黒童話

暗黒童話


それなりに分厚い本なのですが、一気に読めましたよ。新書なのに、二段組じゃないので、その分読みやすかったかもしれません。




主人公は事故により片目と記憶を失った女の子。記憶を失う前の自分は優等生で明るくて、何でも出来る子だったらしい、けど、今の自分はオドオドしてばかりで、うまく話もできない。周りから昔の自分のついての話を聞く度に孤独に陥り、母親からは「こんなの私の子じゃない」とまで言われてしまいます。そんな彼女の支えになったのは、移植された左目から流れ出す記憶。しかし、「和也」という少年のものらしいその記憶には、誘拐された少女が映っていて…。

記憶のあった頃の「私」と今の記憶のない「私」の誤差に悩むさまは、ちょっと純文学っぽくて、ここを突き詰めていけば面白いんじゃないかなぁ、と思いました。その分、あのラストにはちと不満。まぁ、明るい終わり方ではあるんですが、もうひとひねりくらいあっても良かったんじゃない、と思います。まぁ、これは、どちらかというと、暗い女の子に感動移入する癖があるからでしょうね。自立する姿は、良かったですよ。

で、この話、もうひとつの視点からも語られます。これが、グロい。ZOOとかで見せたグロさをそのままに、むしろパワーアップしてグロい。いわゆる犯人側の視点なのですが…、描写がファンタジーに足を突っ込んでます。少々ネタバレしてしまえば、この犯人、人を傷つけることによって、その人を死から遠ざけることができるので…、多少無理な傷つけ方しても、まったく大丈夫なのです。よって、色々なことをやっていくわけなのですが…、んー、グロい。あ、言っときますが、ほめてますよ。ちょっと非現実に足を突っ込んだ描写過ぎたので、怖い、気持ち悪い、を通り越してしまいましたけど。

乙一さんの本らしく、ミステリーの味もあり、なかなか楽しかったです。でも、んー、でも、さすがに設定がファンタジー入りすぎてて、違和感はありましたね。後、この主人公視点の純文学加減と、犯人視点のグロさのチグハグさが、微妙でした。んー、何でこの誤差が面白くなかったんだろう。なぜだか、気に入らなかったですね。でも、ホラーとして、ミステリー(は、最後にならないと登場しませんが)も、そこそこ楽しかったです。

もう少しコンパクトにまとめられていたら、もっときれいに流れて、もっと気に入ったかもしれないですね。