ハートブレイク・レストラン/松尾由美


ハートブレイク・レストラン

ハートブレイク・レストラン


バルーンタウンシリーズの著者さん。ハートブレイク?失恋?と思っていたのですが、どうやらこれは「コーヒーブレイク」な感じです。



舞台はファミレス。主人公はそのファミレスを仕事場として利用する駆け出しライター「寺坂真衣」。そのファミレスは何だか雰囲気が暗くて、あんまり客がいない。そんな折、不思議な事件が主人公に降りかかり…。

日常的な謎を解決していく、短編集。目新しさはまったくないけれど、その分登場人物の魅力が肝のお話です。探偵役は、元地主のおばあちゃん。可愛らしくて、ふくふくしてて、おしとやかでお茶目。うまい具合にほのぼのしてて、安心できます。謎のほうは、手作りケーキにいつの間にか入っていた社長の指輪。壊れている時計が鳴った。ファミレスに来たお客が言った謎の一言、などなど。これどうなってんの、と惹きつけられることはなかったですが、落とし方はきれいにすとん、としています。余計な伏線もなく、余計な感情もなく、ひたすらにほのぼのと謎を解いていく様は、寝物語にちょうど良さそうです。で、主人公に気になる男の人ができたり、少しドキドキする要素も含めつつ、絶対に地震が起こってファミレスが倒壊するとか、火事で主人公が文無しになるとか、そういうことが絶対にないと言える安心感と安定感。こういう話ってよくあるのですが、結局、私が面白いと思える決め手は何なのでしょう。んー、よくわかりません。謎はすっきりとしてればそれで良いし…んー、魅力的な登場人物かな。今回の探偵役はかなり好きです。安楽椅子探偵アーチーより、文面はかなりやわらかめ。なので、拒否感なく読めました。ここがお勧めっ、と声高らかに宣言もできないし、売り文句も思いつきませんが、こういう話、好き。もうずっとそのままでいてほしいので、続編希望。でも、なんとなく、主人公が結婚するのだけは勘弁してください…。