蟲と眼球とテディベア/日日日


蟲と眼球とテディベア (MF文庫J)

蟲と眼球とテディベア (MF文庫J)


随分前に「私の優しくない先輩」(記事はこちら) を読んでから、ずーーっと、いつか読もうと決めてはいたんです。で、読むなら題名で惹かれたこれ、と決めていたのですが、幾ら本屋を探しても見つからなかったんです。何故か、えぇ、出版社を間違えておりましたよ。で、ようっやっと、その勘違いに気づいて、ようやっと手に入れて、でも諸事情により我慢して、ようやっと読むことができました。




さて、話は、褒め言葉の四字熟語全部が当てはまる男「賢木愚龍」が、貧乏ながら健気に生きる少女「宇佐川鈴音」にベタボレしているところから始まります。えぇ、この「賢木愚龍」何をやらせてもパーフェクト、家も金持ち、能力文句なし。ただし、人格に問題あり。「宇佐川鈴音」を溺愛するあまり、芸術もオリンピックも全部蹴って、高校教師になった挙句、金と権力と実力をフルに使って、担任になり、一分でも多く一緒に過ごしたいがゆえに、すべての授業を受け持っています。うーん、こうやって書くと、ギリギリ人内でぶっ飛んだお方だ。しかし、そんなラブラブな二人の周りには、不穏な空気がいっぱい。「蟲」に狙われ、殺されかけたり、殺されたり。どうやらそれには、「宇佐川鈴音」が昔食べた「林檎」が関係しているらしく…。

そして、ある日、「眼球抉子」(がんきゅう・えぐりこ)と名乗る少女が転校してきます。ちなみに、通称「グリコ」。「眼球えぐっちゃうぞ」が決め?ゼリフ。武器はスプーン。この三人が主人公。詳しい話の流れは置いておいて、読んでみての感想は、思いのほかまもとだった、というとこです。ジャンル分けをするのなら、学園アクションファンタジー。アクションあり、切なさあり、ほんわり優しさあり。ただ、私にとっては、この切なさや優しさは目新しいものではないので、新鮮味はなかったです。何となく、私の心構えが悪かったのか、この人のお話は、ものすんごく深い基盤のところが、優しく、いい意味でも悪い意味でも、真っ当なんだと思います。だから、本格的に狂った人が出てくることはない。そんなに絶望的で悲劇的なことは起こらない、と妙な自信を持ちながら読んでしまうんです。ゆえに、私は終盤のアクションシーンを、ワクワクドキドキすることなく読んでしまいました。何となく、予測がついてしまっていたので。それが、残念だったなぁ…。あ、でも、最後はちょっと悲しく、同時に嬉しかったですよ。もう少し早く、感情移入が出来ていれば、もっと楽しかっただろうとは思います。でも、題名の意図するところは好き。あぁいう描写がもっと多かったら良いのになぁ…。んー、もう一味が全体的に足りない感じです。

後、てっきりこの話、連載小説かと思っていました。何だか、場面や章が変わるたびに、同じ説明の繰り返しが多いのです。何でなんだろう…。でも、そんなにテンポは悪くなっていないので、チマチマ読ぶ分に便利かもしれません。

そして、この話はたぶん、「グリコ」ちゃんの可愛さにやられるべきな気がします。と、いうか、「グリコ」ちゃんが大好きになれれば、こんなに楽しい話は、たぶん、ない。かっこいいし、可愛いし、ただ、私はその真っ当すぎる描写に、どうも愛着が湧かなかったんですよ。後、もう一ひねりがあれば、たぶん好きになれた。私はずれた人や黒白のように表裏がある人が好きなのです。でも、次巻がどうなってるか興味はありますね。そう、この巻だけで十分に終わってはいるのだけれど、まとまってはいない。これからどうなるか、どう続けるか、気になるので、気が向いたら次巻を買おうかと思います。