空中ブランコ/奥田英郎


空中ブランコ

空中ブランコ


直木賞受賞作。前作、イン・ザ・プールの記事はこちら。実は読んだのは三日程前なので、ちょっといいかげんな感想になります。




さて、今回の患者は「先端恐怖症のヤクザ」に「義父のヅラを外したい症候群の婿」「スランプのブランコ乗り」その他、二人。前作はほんとはわざとやってる名医なんじゃないか、と疑いましたが、今度こそ本当に伊良部は好き放題してるだと認識しました。と、いうより、前作よりさらにパワーアップして、伊良部のキャラも強烈になっているような。注射大好きの描写も増えたように思えましたし。
残念なのは、露出多めの看護婦さんがあんまり出番がなかったこと。サーカスで動物と戯れている(主観)さまは、かっこよかったですが、この人に関係した短編、増えてほしいなぁ。
んー、後は、先端恐怖症のヤクザが、妙にかわいらしくて、女流作家さんの話は、ビタミン剤みたいですね。
義父のヅラ云々は、ギャグとして読むべきなんだろうけど、どうも笑えなかったです。抑圧されている感じを読んでいると、どうも私は自分も抑圧されている気になってくるようです。
それにしても、なんでこれが直木賞なんだろう。いえ、十分に面白いです。ただ、心に響いてこないんです。面白いのは、結局、話の流れやキャラの強さなんですよ。いえ、他の要素はなんだ、と言われても言葉に詰まりますが…。
この本が受賞したのは、なんとなくですが、女流作家さんの話が、肝だった気がします。小説家を小説家が描くのは大変だろうし、同業者さんたちの視線も変わるのかもなぁ。どうも患者さんたちは性格が少し捻じ曲がっているので好きになれないのですが(その中でも、女流作家さんはとくに)この話の最後は、十分に元気になれると思います。
次作も出ているようなので、機会があったらまた読んでみようと思います。このシリーズが大好き、絶対に面白いと言い切れないのは、あまりに前評判が高くて、隠れ家を見つけたようなわくわく感がなかったからなんだろうなぁ、面白くて当然、心に響いてくるような要素があって当然、と思ってしまうのです。できれば、別の出会いをしたかった。そしたら、評価も随分変わったと思います。