沼地のある森を抜けて/梨木香歩


沼地のある森を抜けて

沼地のある森を抜けて


そういや梨木香歩さんを読むのって、ずいぶん久しぶり。「からくりからくさに連なる話」とはありますが、云われなければ気づかなかったかも…。




さて、話は主人公がおばが死に、代々伝わる家宝の「ぬか床」を譲り渡されることからはじまります。ぬか床は代々受け継がれてきており、嫌いな人にあたると気味の悪い声で鳴いたり、主人公は困りながらもぬか床の世話をしていくのだけれど、ふと、入れた覚えのない卵を発見します。そして、数日後、その卵から少年がうまれ、主人公の幼馴染まで現れて…。
さて、ここまで読んだ私は、心が浮かれておりました。きっと、この少年と主人公が少しずれた日常をおくり、少年の半透明さ加減に悩んだり、幼馴染と少年のべたべたしてる様子を見て軽く嫉妬したりとか、あるいは、ぬか床からどんどん人が出てきて、生活したり、騒いだり、くだらないことで喧嘩したりするんだと思っていたのですよ。
…ちがいました。少年いなくなっちゃうし、幼馴染も姿見せないし、結局、ぬか床で卵から出てきたのは二人だけだし…。勝手に期待して勝手に落ち込んでは世話ないのですが、おかげでこの本を読むのに時間がかかってしまいました。だって、あまりのショックで一回本を閉じちゃったんですもん。
でも、ちゃんと読みましたよ。最後まで。んー、哲学的で、細菌とか酵母の話も多いので、生物学の基礎もさっぱりわかっていない私にはちょっと退屈で難しかったです。
とてつもなく壮大な話をしているのですが、…いまいち世界に入っていけなかったです。一回休憩挟んだのが痛かったですね。なおかつ、途中でまったく別の世界のSFちっくなのが挿話されているのです。これが、きつかった。少しはこういうのになれたかと思ったのだけれども、「そこはいったいなんなんだっ」と叫びたくなってしまうのです。あの、たぶんですが、世界にしっかり入っていれば読んでいる人の中でうまい具合に消化されるものだとは思います。「あぁ…」と納得しかけて、結局頭を抱えるということを、何回か繰り返しました。…むずかしいお話です。時間をかけて読み直さないと、消化できそうにない。
最後のシーンは鮮烈なイメージで、よかったです。…この人たちのほのぼのした続編が読みたい。いや、完成された物語なのであんまり希望持てそうにないんだけど。とりあえず、おしあわせに。私に言えることはそれだけです。