顔-FACE-/横山秀夫


顔 FACE

顔 FACE


ドラマ化もされたこの作品。ドラマも見ていたのだけれど、時々「あ、この場面知ってる」ということがあるくらいで、最後のオチを覚えていなかったので支障はありませんでした。後、たぶんですが、ドラマのほうはそれなりに脚色してあったようですね、共通する場面もあったけど、オタギリジョーの役の人が見当たらない。


注・「陰の季節」の少しのネタバレあり。 関連作「陰の季節」の記事はこちら




そんなわけで、D県警で働く婦警「平野瑞穂」が関わった様々な事件のお話。んー、筋としてはそんな感じなのですが、瑞穂さんは過去にお手柄婦警になった挙句に失踪した過去があり、今は「似顔絵を描く婦警」ではなく、新聞記者などの相手にする部署に最初はいます。
瑞穂さんは様々な事情により「電話相談室」へ行ったりと、この人、一定の場所にいない。「陰の季節」に出てきた二渡さんの姿がまったく見えないのが残念だけど、裏で操作してんのかなぁ、などの余計な妄想で楽しめました。
さて、で、瑞穂さんは、電話相談室で少女からの相談を受けたり、銀行強盗(訓練)の合図出しなどをしていきます。んー、話の筋や落とし方に衝撃は無いです。どうも警察小説は感情移入がうまくいかないのですよ。事実としては衝撃的なのですが、驚くことができない。
この話は筋の確かさや、まとまり方も文句ないです。後に残るのは「婦警」の存在とは何か。
瑞穂さんが似顔絵婦警をやめることになった事件をドラマで見たとき私は「なんてことをっ」と憤慨した覚えがありましたが、祖母は「何で嫌がるかがわからない」と言っていました。たぶん、感じ方は人それぞれってことなのでしょう。ドラマで見た時は憤慨しましたが、本で読むとそこまで感情は揺れ動きませんでしたし。(ドラマ見たのが、ずいぶん昔ってこともあるでしょうが)
瑞穂さんは読んでいくうちに繊細なのがわかるので、警察小説としては感触は柔らかかかったです。そう、柔らかい。けれど、それに何だか物足りなさを感じました。比べてはいけないと知りつつも、裏を扱った「陰の季節」のほうが、私は好きですね。後、瑞穂さんは繊細だけど暴走するので、この後どうなったんだろう、とか、どうやって説明したんだろう、と別のところで胸がドキドキしました。犯人の家にいちゃいけないよ。
んー、嫌いじゃないですよ。嫌いじゃないけれど、何度も読み返したり、大好きっ、とは言わない作品です。
はじけた作品の方が好きな私には、ちょっと刺激が足りなかったですね。