きまぐれロボット/星新一


きまぐれロボット (角川文庫)

きまぐれロボット (角川文庫)


旅行で読んだ本。ゆえに結構前に読んだ本です。


亡くなった人の本を読むのって、本の数が限られてしまっているということが悲しくてあんまり読む気がしないのですが、文庫百冊フェアと、絵が米沢穂信さんの小市民シリーズと一緒だったもので…つい。
ショートショートの神様らしいです。




36篇ものショーとショートが収録されているわけなのですが、ローマ字であらわされる博士たちとか、いかにもぎこちない動きで動いてそうな姿が想像できるロボット達とか、共通してるんだか共通していないんだかわからない登場人物がわらわらと出てきます。このローマ字表記、分かりやすいのですが、感情移入は出来ないですね。まぁ、そもそも本当に三ページから長くて五ページなので、感情移入なんてする暇ないってのが本当なのですが。
近未来っぽい世界観もなかなか心地いいですし、次はどんな話なんだろう、というドキドキ感がありました。ただし、話の内容はいっぺんとおり。あ、決して話の筋が似ているとかではなくて、読み終わった時のなんともいえない気分が、思いっきり共通しています。微妙に脱力、微妙に居心地悪く、微妙にオチが弱い。(褒めてますよ)
実は、この本のうちの「おみやげ」は小学校の頃の教科書に載っていて、なかなか気に入っていた覚えがありました。小学校の頃は、人間の愚かさとか、深刻なテーマを扱っていて、きっと難しい話に違いない、と思ったのですが、こうして36篇の中に入ってしまうと、やっぱり、微妙に居心地の悪いショートショートですね。その物語によって語られている裏の部分を考える前に、すらすらとどんどん読めてしまう。心の中に何かを残すというよりは、褒め言葉として、時間が経つのを早める効果があると思います。はっきり言っちゃえば、時間が潰れる。薄いし、鞄の中に入れておいて、ちょっとした待ち時間に読みたいお話ですね。