下妻物語-ヤンキーちゃんとロリータちゃん-/嶽本野ばら



下妻物語―ヤンキーちゃんとロリータちゃん

下妻物語―ヤンキーちゃんとロリータちゃん



ブームが過ぎ去ってみんなが忘れた頃にベストセラー小説を読む癖が私にはありまして、そんな感じで借りてきました。下妻物語。映画化され、見たこと無いけれど結構ヒットしたようで未だにちょっと見たいなぁ、と思っております。




さて、話の筋を説明するのも妙な気もしますが、下妻という田舎町に住む心がロココなロリータ女子高生「桃子」とバリバリのヤンキーの「イチゴ」の友情、青春物語。下地としては青春物語なのですよ、相反する二人が出会って何やかんやあって、友情を深めていく…という。うん、あくまで下地の話です。だって「友情」なんて言葉、ほっとんど出てきませんもん。視点の持ち主は「桃子」なので、そりゃもうロココ的な空気に満ちているせいか、その精神ゆえにもうとんでもなくバッサリとした性格をしているせいか、ベタベタした感じがまったくしない。

個人的に、ロリータ系の子というのはものすんごく女の子らしくて、か弱いものだと思っていましたが「桃子」を見ていると、そのか弱さが当然だと言うのですから、その時点で弱くないような気がしてきます。「借りたものは返さない」という意味を、これほどまでに納得させられてしまったのは初めてですよ。いえ…実行はしませんけどね。

それと、思いのほか読みやすかったのが嬉しかったです。この作者さんの短編は幾つか読んだことがあったのですが、それがまぁ、揃いも揃って癖が強くて怖いなぁ、とは思っていたのですよ。でも、確かに「桃子」の語り口は独特だけれども、それが人を混乱させるものではなくて、慣れると癖になってしまう感じなのが良。

ちゃんと起承転結があって、サブストーリーもあって、そこにしっかり独特な味があって、登場人物たちはしっかりしていて、印象的な言葉もあって、ちゃんと終わる。後、口調の変化は面白い。ロリータ少女とヤンキー口調の特徴を掴んでいるって、すごいです。

何だかとても「ただしい」青春小説を読んだ気がしてます。おもしろかったです。続編は…どうしようかなぁ。面白いとは思うのですが、これはこのままで十分で、なおかつ、終わってしまうのは残念なのですよ…。