セックスボランティア/河合香織


セックスボランティア (新潮文庫)

セックスボランティア (新潮文庫)


ちと衝撃的なタイトルで気になっていた本。出歯亀根性でごめんなさい。




読み終わった後に、知らない世界が知れる本です。読み始めは、何だか申し訳ない気分全開でした。すみません。タイトルに惹かれてごめんなさいっ、みたいな。幕開けから結構衝撃的でしたよ。ここで言葉に詰まることは許してください。作者さんも本の中で何度か考えていますが、障がい者の方々にだって性欲はある、というのはとてつもなく当然なことなんですよね。よくよく考えてみれば、思い当たらないのが不思議なくらいに。

かといって、私もこの本を読むまでさっぱり意識していなかったので、その裏を考えると…複雑な心境になるというか、むにゃむにゃな気分になるというか…。

考えれば考えるほど深く沈みこんでしまいそうなので、置いといて。

ルポタージュというものはほっとんど読んだことがなくて、この作者さんの語り口と切り口が独特なのか普遍的なのもは判断できませんでしたが、よかったなぁ、と思うのは事実を淡々と述べつつも、同時にそこに作者の感情が存在していて、作者さん自身が答えを探して迷っているところでした。

本当に障がい者の「性」から始まって「性」そのもの、またはさらにその先まで調べよう、知ろうとしていきます。だから、時々「えっ、何でそっちの方面に行くの」と思うことも。だから、統一感はない。一本の筋もない。でも、その行き当たりばったりさが余計に現実味を増しています。

答えがないことなんて最初からわかりきっていたのかもしれません。でも、話を聞きに奔走するんだよなぁ。まるで、最後の消化の仕方を読者に任せているよう。まぁ、私が感じている、ってだけですが。

「性」ってのは凄く個人的なものだと思います。そこに「ボランティア」などの共同体というか、共有体というか…何となく「公」なものが入るってだけでも、色々な反応が起こることは予想できるのですが…、あぁ、自分で書いていてぐしゃぐしゃしてきました。ただ、本当に「個人的なもの」なんだよなぁ。だから、良い制度なんてないし、そういう意味では海外の例ってのは参考にすべきなのかもしれません。確かになぁ「睡眠欲」「食欲」「性欲」を満たすのが生活ならば、女の人を買ったりするのも十二分に「生活費」だもんなぁ。でも、それってやっぱり、少し受け入れにくい。「性」そのものがどうも個人的って理由で、光を当てないで薄暗い感じがするからでしょうか。

でも、うまくいくとは限らない。というか、大方うまくいかない。色々厳しいのです。その厳しさが痛々しくも、何だか少しだけ眩いのです。普通の状態よりも、少し性に対する光が増えている感じがするだよなぁ。まぁ、物理的に手助けが必要ってこともあるのでしょうか。それとも、ルポだからかなぁ。

…んー、なんともいえない。でも、こういうこと(具体的に何かはわかりませんが)に少しでも興味があるのならば、考えるきっかけになります、きっと。

考え始めると、ぐるぐるしますがそれは悪いことじゃないはずです。