断章のグリムⅠ-灰かぶり-/甲田学人



「Missing」シリーズ作者さんの、別シリーズ。丁度、Missingが終わった後に始まったので、今はこっちが主流なのでしょうね。で…本当はね、わかってはいたんですよ。新シリーズに手を出す前に、Missingの方を読み終わらなきゃいけないとは、判ってはいたんですよっ。でもでも、絵が三日月かけるさんだったんですもんっ。一方的に通い続けているサイトさんの絵なんですもんっ。



さて、絵が沢山見れたのは嬉しかったのですが、それと内容は別問題なので、ちゃっちゃと行きます。話の筋は「神の悪夢」の欠片である泡が巻き起こす騒動について。この「神の悪夢」の欠片が人の中に浮かび上がると、色々と怪現象が起きた挙句、死か、生か、になります。で、上手い具合に生き抜くことが出来た人々がその「神の悪夢」と対決するために作った組織があって、その人々は自分のトラウマを武器にして戦います。えぇ、この文章読んでも、たぶん、さっぱりわからないと思います。まぁ、簡単に言えば、ホラーアクション。
主人公は普通を愛する少年「白野蒼衣」と「神の悪夢」ゆえに日常を捨てた少女「時槻雪乃」。殺伐としながらも、なんだかこいつら、ものすっごい微妙なほのぼのラブやってます。…ひと言言わせてもらえるのならば、似合わない…。ごめんなさい。片方で眼球えぐられた女が迫ってきているのに、片方で「雪乃さんが幸せな方が僕も嬉しいし…」と言われても、その格差が面白い以前に、微妙です。いえ、ちゃんと主人公にもそんな恥ずかしいセリフを言う理由もあったりするのですが、受ける側の雪乃さんも、私見でデフォルメするとツンデレです。個人的には、脇役の方のほうが好き。「神の悪夢」に触れたゆえに、記憶を喰う虫に支配された「田上颯姫」とか、よくわからん骨董屋の主人とか、喋ることを止めた(正確に言うと違うけれど)予知夢の少女とか。
話の筋は「灰かぶり(シンデレラ)」になぞられた怪奇についてなのですが、基本構成はMissingとよく似ています。ただし、こっちは真っ当に物理的に戦います。まぁ、炎が出たりと科学的には不可能なことなのですが、それでも戦います。後は、一応この人お得意のホラー系の描写があるのですが、どうも迫力が足りない。というのも、対象が主人公なので、基本的に助かるからですね。まぁ、ホラーアクションですし。
基礎が難しい設定の上に、最初にばーっ、と説明されるので、最初は腰が引けるかもしれませんが、まぁ…そういうもんなんだぁ、で納得しておきましょう。どうも強引に御伽噺に結び付けてる気もしなくもないんだよなぁ…。御伽噺になぞらえた謎もあるのですが、こういうホラー系は元々推理する気がないもんで、全て「へぇ」ですませます。
結局、私はこの主人公二人が、気に入らなかったようです。雪乃さんのある一面は好きになれそうなのですが、何故だか、ときめかない。やっぱり、微妙なほのぼのラブのせいかなぁ…。脇役の方々が気に入ってるだけに、ちょっと残念。個人的に「颯姫」ちゃんにスポットが当たるような話があれば、喜んで読みます。…んー、でも、絵に負けて二巻目も買ってしまう予感。土台がきれいに収まった所なので、次の展開にあんまりときめかずに期待してみます。