神様からのひと言/荻原浩


神様からひと言 (光文社文庫)

神様からひと言 (光文社文庫)


記事を書くのが随分久しぶりになってしまいました。いえ、切羽詰ってたり暇だったり色々だったのですが、ただ単に記事を書く時間を他のことに当ててしまっていたのが敗因です。
なので、これもかなり前に読んだ本。簡単であてにならない感想かも。




筋は、老舗カップラーメン製造の会社「珠川食品」に再就職した佐倉涼平が主人公。前に広告代理店に勤めていたことから、新たな商品の広告戦略を任されます。しかし、その大事な販売会議でトラブルを起こしてしまい、なんと、リストラ要因収容所と恐れられる「お客様相談室」へ異動になってしまいます。そこに居たのは、ダメ上司の集大成のような課長に、始終ネットを見ているオタク、喋ることの出来ない大男に、競輪大好きな「篠崎」。途中からは美人な元社長秘書も加わって、なかなか楽しい顔が揃っております。
主人公は、WOWOWでドラマ化されたさいに「電車男」をやった「伊藤淳史」さんだったので、てっきり気弱な流されるタイプのサラリーマンかと思っていたのですが、上昇志向が強くて逞しいお方でした。それが意外で、新鮮。
話の半分くらいはこの「篠崎」に「佐倉」に仕事を教わっていくこと。「珠川食品」は上に居るのが超お堅いご老人たちなので、かなりのクレームがあります。虫混入から、味が不味い。かやくの入れ忘れから、そっちの筋からとか。縁あってクレーム対策の本は何冊か読んでいるのですが、本に書いてあるまま、しっかりとツボを押さえた対応しているなぁ、といった感じ。基礎は押さえながら、この「篠崎」さん、痛快なところは痛快で、爽快。そっちの筋からの人からのクレームは、とても楽しく読めました。ほんと、いいキャラしてるんですよ。いい加減だけれども、仕事は出来て、でも、本気にはあんまりならない。個人的に、「明石町」との掛け合いがとても大好きです。
物語の終盤あたりになってくると、新たなラーメン開発の交渉係の仕事が入ってきたり、と光明が見えたりし始めるのですが、そこからの展開は…言ってしまうとつまらないので省略。いい意味で裏切られました。たまに苦悩が見えたり、リストラ要因であることの影が差したり、自分たちをおでんに例えてしみじみ人生語ったり。それでも、ここに出てくる人たちは、何故だかかっこいい。姉に聞いたところによると「人間、案外生きていけるもんだ」ということで書かれたものらしいので、その意見にしみじみ納得。見方によってはどん底だけれども、最後は明るい終わり方。希望って、こういう風に光るのだな、と思いました。私は会社員でもないし、会社員の知り合いの方もいないのでわかりませんが、それでも、私にとっては「頑張れ」ではなく「大丈夫だ」の応援のお話。深く深く深く心情を表す話ではないけれど、だからこそ、いい読後感でした。