プーさんの鼻/俵万智


プーさんの鼻

プーさんの鼻


ずーっと読みたかったのに、一向に図書館で出会えなかった本。ついには予約をしましたよ。この人は「チョコレート革命」しか読んでいないのですが、その後のことが気になっていたのです。



言ってしまえば、私は短歌ってこの作者さん以外読んでいないのです。だから作品の良し悪しなんてサッパリわかりはしないのですが、読んでいてとても楽しかったです。私はトリイ・ヘイデンさんの話でさえ、トリイが誰とくっ付くのかにヤキモキした人間なので、微妙に隠されるととてもとても気になるんですよ。で、シングルマザーになったという話はどこかの対談で見てはいたのですが…、読んでいるとそんな気になる気持ちは置いておくことになりました。いいです。本来の関心は恋愛にあったはずなのに、すっかり表される子供の姿にやられてしまいました。
だって「この中にアリがいるよと教えれば子はアリの巣を「なか」と覚える」とかですよっ。身近に子供がいると、頷けるものが多いこと多いこと。実際に子供はいない私がこれほど思うので、出産した後とかならばもっと楽しめるかもしれません。妊娠中から書かれていて、お腹の中での不思議な感じや、最初はふにゃふにゃしたものだった子供が、ページを捲るごとにどんどん個性を獲得していく様子は微笑ましいです。いや、短歌って凄いわ。
で、合間合間に、恋愛関係のも入ります。…驚いた。この数年に何があったんだっ、と思わず問い詰めたくなりたくなるほどですよ。ただ、対談でも上手い具合に交わしていた覚えがあるので、想像で補うしかないです。「鍋」の段落がお気に入り。それとは別に「香を焚きあなたを待てど―――」とか、「不良債権ような男も―――」とか。えぇ、笑いましたとも。その情景が浮かんできては、くすり、と思ったり、好奇心を書き立てられたり、たまにはしんみりしたり。とてもいい。本棚に置いといて、ふと、何となく手にとる本になりますよ。そういう風に読みたくなる本です。あ、寝る前に、子供が主の段を読むと良い夢が見れそうですが、恋愛関係の悲しいところを読むと、少々物悲しい夢が見ることになるかもなので思うので、注意。私はそうでした。