インディゴの夜-チョコレートビースト-/加藤実秋


インディゴの夜 チョコレートビースト (ミステリ・フロンティア)

インディゴの夜 チョコレートビースト (ミステリ・フロンティア)

散り咲きで検索して見ても出てこないので、どうやら前作を読んだのは随分前になります。風変わりなホストクラブ「club indigo」に持ち込まれる事件や謎を解決する、連作短編集。


さて、主人公は編集者でありクラブの経営者でもある「晶」。ついでにその経営の相棒であるいい加減な「塩谷」や謎に包まれた王道ホスト系の外見をした「憂夜」などが…主でもないな。ずっと主人公の視点で進みます。基本的に捜査をするのはindigoのホスト達。ついでに事件に巻き込まれるのもホスト達。とはいっても、レギュラー系のホスト達と事件や謎があるのは、別人なことが多いです。
話は四篇収録。
「返報者」は、超売れっ子ホストからの依頼。このホストは前作で活躍していたはずなのですが…どうしよう、よく思い出させない。いや、居た。確実に居ました。話の筋は次々とホストが奇妙な襲撃に合う事件が勃発。犯人らしき人物の監視を依頼されるのです。…ちょっと、無理があるなぁ、というのが素直な感想。人の感情的にはあり得ないとは言わないけれど、経済的な裏が見えないから「んー」と思ってしまいました。説得力が少ないのです。最後の落とし方は明るさは、結構好き。
「マイノリティ/マジョリティ」は、編集者失踪事件。頭に登場人物を入れて読むべきでしたね。集中力を欠いてしまいました。何となく「むー…」という出来。筋は通っているし、問題はないのだけれど、あまりに話が上手く進みすぎている気がします。要するに、空振り、って事が無い。これはこの作品丸ごとに言えるのだけれど…たまにはガックリしてみませんか。的中率120%の占い師くらいに、リアルじゃない。
「チョコレートビースト」犬は可愛いなぁ…。これは四十三万円の犬誘拐事件。登場する「ママ」のキャラが濃くて素晴らしいです。一番キャラが立っちゃっているのは気のせいですか。まぁ、偶然誘拐されたわけなのですが…、ご都合主義は置いておいて…今までで全体的にアクションシーンがあるのは仕様…なのかなぁ。…あの、嫌いなわけじゃないんです。この話、犬もママもいい感じだし。ただ、ツッコミを入れ始めると……刺青家のサイドストーリーも好きですよ。
「真夜中のダーリン」病弱ホスト頑張る、の話。一番好きですね。で、一番面白い。一部…いや、二箇所か、引っかかったところはあったけれど、この話の主人公である「吉田吉男」のキャラがいい感じなのです。そして、話の流れも綺麗で、わかりやすくありつつも面白い。最後の描写の仕方が好きです。感動系のお話なのですが「吉田吉男」のキャラがしみったれた所を相殺してくれています。むー…こういう話をもと読みたいなぁ。
…なんだか微妙な感想になってしまいました。何故だろうか。んー、これはある種のファンタジーとして読んだ方が良いのかもしれません。ホストホスト書いてますが、TVから放たれているホストのイメージとはかけ離れた存在ですし、後ろ暗さも、同時に煌びやかさもあんまりない。お客を口説く場面も殆ど無いですし。それと、どうしようもなく都合が良いです。これは、今の私の頭ん中がリアル寄りを望んでいるからなせいもありますが、もうちょっと出来事の背景があっても良いな、と。そもそもの設定がファンタジーがかっているので、口うるさくいうべき箇所ではないのかもしれません。…それにしても、幾つかスッキリしないことが残ります。ここまでスッキリしないと、私の読み落としを疑いたくなりますね。十二分にありえるし。もしかして、次回作への伏線だったりして…、と淡い期待もあったりとか。
後、読み込みが足りないのか、前作よりも人物が薄っぺらく感じてしまいました。もっともっと、レギュラー陣の内面を掘り下げる事件が読みたいな。捜査されても、そこに感情移入が出来ないので。ただし、ライトな口当たり、ということでは、このくらいが良いのだと思います。軽くて読みやすい。んー、なんだか今回は相性が悪かった。
「真夜中のダーリン」は、本当にいい感じだったので、多分、次回作にも手を出すだろうなぁ…。


後、まってくもって関係ないですが、この本「、」の形が妙に長くないですか。一番最初にそれが気に掛かってしまいましたよ。