さよなら妖精/米澤穂信


さよなら妖精 (ミステリ・フロンティア)

さよなら妖精 (ミステリ・フロンティア)


着々と書店の米澤穂信さんの扱いが大きくなっていって、嬉しい反面、少々不安です。その内、誰か実写化とか言い出すんじゃないだろうか…。どれにしても…。既に漫画化はしているはずだしなぁ…。

*書いている内に、ネタバレくさくなってしまいました。注意。



まぁ、そんな不安は置いておいて、米澤穂信の単発青春もの。あんまり簡単に青春とは言いたくはないのですが、ま、これは確かに青春、しかもキラキラした輝きを押さえつつ、の青春。確か、どこかで読んだのですが、元々は「古典部」用に考えられていた話らしいです。もしそうなっていたら「異国の少女乱入編」とでもなっていたのかも。
さて、話は少々やる気のない主人公が、偶然的に異国の少女「マーヤ」に出会うことから始まります。「マーヤ」は色んなことに対して意欲的で真面目で「哲学的意味がありますか?」と何かにつけ尋ねてきます。うん、この「マーヤ」の輝きっぷりは凄いです。それも静かに光っている感じ。独特な存在感を持った子だなぁ。あんまり日本語が上手ではなくて、ちょっとみょうちくりんな話し方が、これまた良いです。
で、話は「マーヤ」が居た二ヶ月の間に起きた些細な日常の不可解な出来事を回想していく感じ。謎解きはその時点で既にすんでいるので、後になって衝撃の事実発覚っ、なんて事はありません。でも「マーヤ」が居るからこそ謎が生じるといった感じが素敵。消化不良なものもありませんでしたし、謎の種類も結構好み。語り口もすんなりとしていながら、雰囲気があって良いです。
終わり方は…あぁ、もう青春だなぁ。やるせなさといい、閉じこめられた感じといい。話す内容のあの軽いとも重いともつかないくせに、耳につく感じといい。ほかの方の感想内に「セカイ系」という言葉がありましたが、一瞬「?」と思った後に納得。うん、そういうことだなぁ。決して、後味が悪いわけでも、消化不良になるわけでもない。だけれども、あの侘しさはなんともいえない…。それが好きか嫌いかで評価が分かれそうですが、最後らへんの作りとしてはかなりの完成度。無駄な部分がないとかじゃなくて、雰囲気があふれ出てますから。
それとやっぱり「マーヤ」の素敵さ加減は最強です。こんなにも意欲的で凄い子久しぶりに見たよ。それが全く嫌味じゃないって凄いよ。
ちょっとアンニュイな気分になった時に読むと、謎解きで少し明るく、最後でアンニュイな気分を盛り上げてくれるかもしれませんよ。秋の日に読むのは良いかも知れない。