ハナシがちがう!笑酔亭梅寿謎解噺/田中啓文 〆


笑酔亭梅寿謎解噺 1 ハナシがちがう! (集英社文庫)

笑酔亭梅寿謎解噺 1 ハナシがちがう! (集英社文庫)


お久しぶりです。えぇっと、一度サボるくせがつくとなかなか治らないってほんとなのですね。ある程度溜まってしまったので、ささっと書いてしまおうと思います。




最初の段階はこんなドラマあったなぁ、と少し懐かしく思い出しておりました。話は、不良少年「竜二」が酒飲みで乱暴な落語家「梅寿」のもとへ無理やりに弟子入りさせられるところから始まります。「竜二」は古典落語の世界に魅了され、落語の修行をしつつ、なぜか巻き起こる怪事件を解決へと導いていく。
私が好きな連作短編集で、落語も好きなので嬉しい組み合わせなのですが、この作者さんの本分を忘れてはなりません。実際、読むまで不安だったのですよ。だって、明らかにほのぼの系の匂いがするあらすじと、私が読んできたコミカルなまでのグロテスクじゃ、ぜんぜん違いますもの。
でも、読み始めて数ページで、安堵しました。師匠である「梅寿」はとてつもなく傍若無人で悪い意味で子供っぽい人で、そして、乱暴です。殴る描写が痛いよっ。そこでゾワゾワさせてどうすっるんだ、と思いましたが、やっぱり基礎は変わらないんだなぁ。そりゃぁ、いつもより影をひそめているのですが。
話は全部で七本。一応落語本編を絡むような、絡んでいないような…。えっとですね、一話一話やっていくのはさすがに辛いので、省略しますが、なんというか、全体的に少年漫画特有のにおいがするんです。無意味に乱暴なあたりとか、「竜二」が愚痴りながらも実はすごい才能もってたりとか、それこそ話全体に通じる、奇妙な現実感のなさと少々泥臭い雰囲気とか。
謎はいつも「竜二」が解いて、それを「梅寿」の手柄にする、という方式がとられているのですが、お前、よくわかるなぁ、というのが素直な感想です。なんというか、短編だからヒントがえらく少ない。ついでに証拠品が見つかるわけじゃない。要するにかなりの部分を想像で謎解きをしていくわけです。でも、それが外れることはない。ま、当たり前。でも、たまにそれがすごく居心地が悪くなりました。人が死ぬことが、当然な世界に、私は馴染めなくなっているのかもしれない。
でも、読み勧めるにつれて、なんだかこの世界にハマっていっているのかな、という気になってきます。最初あれほど気になった殴る描写の痛さも気にならなくなり、言葉の乱暴さにもなれて、個玖性豊か過ぎて胸焼けしそうなキャラクターたちにも慣れ、独特な語り口になれて…最後らへんで、やっとこそさ、話そのものを楽しめるようになった気がします。謎に色々無理があることは…まぁ、それも独特の雰囲気のひとつだと思えば、気になりません。きっと。
ただ、続編が読みたいとは思わなかった。ほのぼののしていないけれど、かといって凄くドキドキするわけでもない。予定調和の中で暴れている感じがしたのですよ。それと、落語とあんまり絡んでないことは…やっぱり、つっ込んではいけませんか。そうですか…。