銀河不動産の超越/森博嗣

[Mystery(日本)] 銀河不動産の超越/森博嗣


銀河不動産の超越

銀河不動産の超越


森博嗣です。読むの随分久しぶり。銀河不動産に務める主人公と、不思議と集う人々の連作短編集。


面白かったです。同作者の「ちょっと変わった子あります」に似た、理性的だけどちょっとずれた不思議な文体。微かに微かに微かにミステリー風味……なのか。正直わかりませんが、最後にちまっと驚いたのは本当です。

人情味というには変わった人々ばかりが集まり、仲良し、をアピールするより淡々と受け止める主人公の素敵さ。どこにも温度差はないけれど、人が集まっても決して高くならない。このぬるま湯の感覚が気持ちいい。

主人公がふとしたことで一人で住むには大きすぎる一軒屋を手に入れたことが、物語のスタートでもあるわけですが、いいなぁ、すごくいい。変わった建物と、そこに淡々と馴染む主人公。個人的に、寒くなって「あぁ、二階の方が暖かい」と気づく場面が好きです。特に何が、というわけじゃないのですが、なんとなく、そういう些細なことだけどそこにバカにできない何かが潜んでいるような、そんな気がします。結局淡々と流れていくのですが。そして、家に色んな人が集まって勝手に生活をはじめる。けれど、それは絶対ではなくて、ちゃんと出て行く。でも、何かが着実に増えていく。

「婚約者」が登場した時にその人の浮きっぷり(設定的に)びっくりしましたが、それに馴染むのが……すごいなぁ。

楽しいです。どんな人がやって来て、どんなことをしでかすのか。その人々がまた楽しい。いやな人? 出てきませんって。善人ばかりじゃくて癖が強いけれど、世界はきちんと丸いのです。そしてちゃんと驚いたり困ったりするけど、どうしてもどこか淡々としてしまう主人公。このバランス最高。

理性的ほのぼの、冷静的ほのぼの、この奇妙な温度にハマりそうです。