シャングリ・ラ/池上永一


シャングリ・ラ

シャングリ・ラ



分厚かったぁ。長かったぁ。厚さはチョコレート・アンダーグラウンドと同じくらいなのに、文字が小さくニ段組っ。 半日が消えました。



さて、……あぁ、長かった。読み終わった感想がとりあえずそれです。ドラマを4クール分くらい見た気分です。話は…

地球温暖化の影響で東京は熱帯の都市へと変貌した。都心の気温を5℃下げるために東京は世界最大の森林都市へと生まれ変わる。しかし地上は難民で溢れ、積層都市アトラスへと居住できる者はごく僅かだった。地上の反政府ゲリラは森林化を阻止するために立ち上がった。(Amazon説明文より)

です。すみません。説明するのを放棄します。だって、どこまでが「最初」なのかわからないのだものっ。その反政府ゲリラを指揮するのが「國子」。彼女の母親代わりのニューハーフの「モモコ」。アトラスで雅に暮らす「美邦」。その医者の「小夜子」…えぇっと、登場人物が膨大なので省略。それでもかなりキャラが濃いので、忘れることはありません。カッコイイですよっ。特に「國子」が。でかいブーメラン振り回して戦車をぶった切る姿が爽快です。
で、話はゲリラがアトラスを落とす……だけではありません。もう状況が二転三転した挙句、もうどこに転がっていくかわからない。別々の視点でスタートした色んなものが収束していく快感と期待。ちゃんとサイバー系で一筋が通っているのかと思いきや、どんどん暴走と土着的要素が加速していきます。あれは暴走だ。著者の意図かもしれないけれど、話の転がりっぷりは異常です。あれだけの想像力に脱帽です。あ、ちゃんと設定はわかります。ぶっちゃけ「メデューサ」が何をしているのかは「?」なのですが、それで問題なし。危機が迫っていることがひしひしと伝わってくる。それでいいや。
本当に、大スペクタクル。もう何でもあり。正直途中でだれました。あまりに……長すぎるなぁ。余計な伏線が多い、とは言わないけれど、収束までに時間がかかる。伸ばし伸ばしにしている間に「あぁ……きっと」という諦めにも似た察しがつく。でも、好きな登場人物がいれば、その人を追うだけでお腹いっぱいになれるかと。
戦闘シーン満載です。多すぎる気もするけど。それでも一気に読めたから、吸引力はすごいんだろうな。冷徹なSFではなくて、人情味が溢れ出てる感じが素敵です。「小夜子」のすごいことすごいこと……。後、掛け合い漫才も楽しいのですよ。楽しい、よ。空気がほぐれるし、人物の性格がよくわかる。ただし、あちこちでやるからもう……。もう……っ。読者の緊張感をほぐしたいのか、わざとだらさせたいのか。最後らへんになると、色んな有り得なさから笑えてきます。すげぇよ。緊張感が笑いに転化されるのって久しぶり。笑っていいのかちょっと微妙な緊張感が漂っているのが、また乙なもの。
楽しいですよ。読み返す体力はもうないけれど。体力吸われますが、ちょっと楽しい世界へいけます。………………あぁ、思い出すだけで、ちょっとクラクラするよ。方言がないので、そういう意味ではかなり読みやすい。濃いわぁ、長いわぁ、愛情すごいわぁ、暴走してるわぁ。
なんというか、(他の作者さんと比較するが嫌な人は反転しないでくださいね)
「生ける屍の死」と「忘却の船に流れは光」を足して別の要素をどくどくと注ぎ込んだ感じです。