水の時計/初野晴

水の時計

水の時計


どこかで聞いた題名だったので、図書館から借りて来た本。
脳死状態になった少女が、童話の「幸福の王子」になぞらえて、様々な臓器を人に提供していく物語。
最後に待つのは心臓が止まるという死(彼女は既に死んでいるのだけど)しかない。

ミステリーというには、これが謎だっ!と提示されるわけではないので、読んでいる感じはほとんど純文学に近かった。

設定も肝心要となる部分がファンタジー(非現実的)に作られているのも相成って、まさに現実の御伽噺を読んでいるよう。

最後には泣いてしまった。
やるせなさというか、脳死状態の彼女の独特な喋り方が恋しくてたまらなくなったのだ。

万人向け、と呼ぶには何かが足りない話だけれど、私は大好きだ。
あぁ、もう、切ねぇな、こんちくしょう。な感じ。

真っ盛りの純愛ブームの中、ちょっとずれた純愛を読みたい方、おすすめですよ。




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水の時計 (角川文庫)

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