疾走/重松清


疾走 上 (角川文庫)

疾走 上 (角川文庫)

疾走 下 (角川文庫)

疾走 下 (角川文庫)

衝撃作!と銘打たれた本作。
これも映画化されるんですね。なんだろう、手にとって帯眺めるまで知らなかったんだけど、この頃本の映画化に力をいれてるでしょうか。世界の中心〜などで成功したため、かな。
で、感想は…。



うわ。
某有名中学校教師ドラマの三年分くらいの不幸を一人に集約しております。
重松清、をほのぼので、泣けて、ちょっと救い、のイメージが固定された人には衝撃かもしれないなぁ。私は衝撃は受けませんでしたが、一気に読んだら、読み返す元気がありません。
でも、胸の奥底までは響いてこなかったな。
理由は、主人公「シュウジ」が聖書と密接な関係があるせいかもしれません。キリスト教は肌に馴染まないんですよ。
後、癖のある語り方。最初は定年ゴジラの暖かく見守るような小さな神様の視点の、悪魔版に感じられました。頻発する単語が「おまえ」だしね。
バルブ崩壊直後の田舎町から、大阪、東京。場所は移動しても、主人公は「ひとり」
優しい人ばかりが登場する話ではありません。
主人公も良くあろうと頑張っているわけでもありません。
彼の人生をなぞる話ですが、おそらく「救い」を求めるのは間違いです。
リアリティと、触れたことの無い別のリアリティが混ざり合い、うーん…大変だなぁ。
主人公が出会う人々の断片的な人生の語り方が、ちょっと心に残りました。
でも、最後はちょっときれいに終わりすぎな気がします。
映画化したさいには、良いシーンになりそうな予感はするけど、やっぱり、不満…だな。



以下ちょいネタバレ






徹底的な不幸ではないのを、不幸とするか、救いとするか、なんだろうけど、結局、重松清は、重松清、なんだな、と。最後に「救い」と思えるものを用意するのは、ちょっと消化不良な感じになりました。(なんだろ、徹底的な不幸を期待したせいかな…)