チグリスとユーフラテス/新井素子


チグリスとユーフラテス

チグリスとユーフラテス


初めて読む人です。表紙の可愛さと謎の題名に引かれて手に入れました。

私にしては、珍しく菅浩江以外のSF作品でしたね。

読み終わった率直な感想、面白かった!大声で叫びたいぐらいに、面白かったです。




あらすじは説明が難しいのだけれど、惑星ナインに移民した人々にまつわる話。

治療不可の病にかかった人々が未来へ希望を託し、コールドスリープ(冬眠状態)したものの、目覚めると、そこにいたのは、少女趣味な格好をした七十過ぎの「最後の子供」ルナだった…。

「最後の子供」に起こされてしまった、4人女性の物語。そして、惑星ナインの物語。

うまく伝えられている気がしないので、最後にデータベースからの引用を載せておきます…。

この本は、元々連作短編として企画されたもので、四編の章により成り立っています。

遍歴は著者があとがきに書いてありますが、最終的には連作長編という珍しい形式に落ち着きました。まぁ、そのためにハードカバーなのに二段組という、さらに珍しい事態まで引き起こしてます。なので、読み始めると朝が来るのは確実ですよ。

さて、物語に話を戻しますと、読み始めた途端、ぐんぐんとその世界に引き込まれていってしまう吸引力がありました。

もう、目から鱗の設定に、話がどこに転がっていくのか先の読めない展開。

基本的に、起こされた女性達は病気を患っているので寿命は僅かだし、大きな騒ぎもないけれど、「最後の子供」のルナとの関係と、女性達の回想はひどく引き込まれるものでした。

もう、本当に、面白いんですよ。

最初はルナの無邪気な可愛さにやられたのですが、その感覚がどんどん変わっていきました。あぁ、言葉で説明できないのがもどかしいです。でも、面白いんです。

で、ルナに起こされた女性たちは、その時代を象徴するような人々で、その時代がどうなっていたか、を如実に語ってくれるのです。(起こす順番は最近から過去、だから逆年代史になるわけです)それに、この女性たちが揃いも揃って魅力的でした。

ルナは「最後の子供」で、もう死しか残されていないのだけど、基本色は暗くない。むしろ、どこかさっぱりとした明るさがありました。

それは、おそらくこの著者さん独特の文体のためかな、と思います。「何々だよお」とか、可愛らしい言葉が、場面をしっかり選んで使われいるんです、それが、私にはひどく魅力的に感じられました。

結構、女性たちは、はっちゃけていましたし。

最後の「レイディ・アカリ」の章なんて、一番暗くなっているはずなのに、一番明るかったし。何だかんだで、結構この小説で笑わせてもらいました。

それに、惑星の年代史であるだけ深く、考えさせらます。

たぶん、読んだ人それぞれの考え方ができるんじゃないかな、と思います。

面白かった!個人の好き嫌いは文体や設定のためわかれそうだけど、私としてはすっごく面白かったお話でした。

よし、この人の次の本を探してこよう。

あ、題名の意味はわかりましたが、本編の中ほどまでまったく出てこないので、気にしないほうが無難です。


レイディ・アカリ、キャプテン・リュウイチも好きなのですが、ダイアナ・B・ナイン、大好きです。



  あらすじ↓

遠い未来。地球の人々は他の惑星への移民を始めた。その九番目の惑星「ナイン」に向かう移民船に搭乗したのは、船長キャプテン・リュウイチ、その妻レイディ・アカリを含む30余名の選りすぐりのクルーたち。人々は無事ナインに定着し、人工子宮・凍結受精卵の使用により最盛期には人口120万人を擁するナイン社会を作り上げる。だが、やがて何らかの要因で生殖能力を欠く者が増加しだし、人口が減少しはじめ、ついに恐れられていた「最後の子供ルナ」が生まれてしまう。たった一人、取り残されたルナは、怪我や病気のために「コールドスリープ」についていた人間を、順番に起こし始める。最後の子供になると知りながら、母親は何故自分を生んだのかを知るために。また、ナインの創始者でもあるアカリに惑星の末路を知らしめるために。ルナと四人の女たちで語られる、惑星ナインの逆さ年代記