海を抱く-BAD KIDS-/村山由佳


海を抱く BAD KIDS (集英社文庫)

海を抱く BAD KIDS (集英社文庫)


BADKIDSの続編。思っていた通り、前作の主人公は脇役としての登場でした。
ちなみに、前作の記事はこちら




今度は前作の倍以上の長さのあるお話です。
前作のヒロインは今回のヒロインの友人として登場します。同じく、前回の主人公も、今回の主人公の友達です。まぁ…ヒロインの間には友情だけですまないものが存在しているわけなのですが、それはまぁ、置いといて。
今回の主役は前作の主人公たちと同じ学校に通う、男女構わず性欲の強い、けど優等生を演じる女の子とサーフィンさえやっていれば幸せだと言い切る男の子の話。
女の子がやれば何か変わるだろうと援助交際を目撃された事から、二人の奇妙な関係がスタートします。
最初から肉体関係もたれた時はこの先どうなるんだろう、と頭を抱えましたが、ただの恋愛云々で終わるはずがない話でしたね。
主人公たちの家族たちが問題だらけでございます。主人公の父親はガンで、少女の兄貴は失踪中。…これがほんの一部分です。
他にも主人公たち自身の問題もあり、それでも何とかかんとか、無茶苦茶になりつつも自傷や自殺を考えないこの子達は強いなぁ、と思いました。
本当、無茶苦茶で傷つきやすいし、直感で行動するし、後も先も考えない。
それでも、彼らがちょっと愛しくなりました。
青春と一言で片付けてしまうには、ハード過ぎる話ですが、それでもこれは青春小説なのだと思います。
それでも、思春期だ、で絶対に片付けてはいけない話。
実際のところ、彼らの人生がこれからどうなっていくのかさっぱり予想がつかなのですが、主人公二人には、仲良くなくてもいい、ジャンルわけ不可能な関係でいてほしいものです。


ところで、この話は、前作と同じ時間を過ごしています。
そのため、前作と被る場面が存在します。いる方向が変わることで、あんなにも場面の意味が違うとは、驚きました。
人の心はそう簡単にゃわかりはしないのだと、教えられましたよ。
ただの青春・恋愛小説ではなく、人の心についても考えさせられるので、できれば前作を読んだ後で手にとってほしい本です。