緑幻想-グリーンレクイエムⅡ-/新井素子


緑幻想―グリーン・レクイエム2

緑幻想―グリーン・レクイエム2


さて、前作「グリーン・レクイエム」と同時に手に入れた本なのですが、やっと読むことができました。前作の記事はこちら

この作者さんの文体、かなり独特だと思うのだけれど、それに随分馴染んできています。




前作の終わりで、一体どうやって続編作るのかなぁ、と思っていましたが、結構ストレートな作り方でした。

話としても、ラブラブモードから、随分変わって、様々な人の生き方について、ですね。

視点もころころ変わりましたが、様々な考え方があるものだなぁ、と。夢子さんの暴走が、怖くもあり、かわいくもありました。

最後はもうちょっとゴタゴタするかと思いましたが、結構あっさり。

それと、登場人物のその後とか、この終わり方、ちょいっと強引過ぎないか、とも思いました。あとがきで作者が言っていますが、この話、かなり別バージョンが書かれたそうです。それも納得の、ゴタゴタした感じと、話の決着のつけたかです。

登場人物が増えた分だけ、視点の変更が多い分だけ、話の筋は見えにくいのだけれど、この話の行き着くところは、結局は、「グリーン・レクイエム」の明日香の強さなんだなぁ…と。彼女の強さには、ちょっと感慨深いものがあります。


「」の中は出来ることなら話の中で聞いてもらいたい言葉なので、隠してます。


それと、もうひとつ、この話は「植物はすべての他者を愛している」ということを、伝えたいためのものかな、と思います。登場人物がどうとか、設定がどうとか、そういう前に、ただ、そのメッセージを伝えるために書いた物語。「植物はすべての他者を愛している」と繰り返し語られると、植物が愛しく、同時に畏敬の念まで抱いてしまいそう。この論理、好きです。この理論、私にとってとても印象深く、面白いと思ったので、植物が好きな人とか、環境破壊どうかなぁ、とか思ってる人にとって、この話は面白く読めるんじゃないでしょうか。

あ、決して、登場人物たちが魅力的でない、と言ってるわけじゃないんですよ。

相変わらずカップルのラブラブっぷりに毒気を抜かれましたし、新たな登場人物の、黒田と夏海さんは、本筋とあまり関係なくお気に入りです。まぁ…もうちょっとほのぼのしていて欲しかったので、エピローグ読んだ時に唖然としましたが…。

うーん、でもやっぱり、この物語の主人公は「明日香」とかではなく、植物だと感じました。そんなわけで、拓と世界樹の取り合わせが、この話の中で一番好きです。

絶対枯らすだろうけど、植物を育ててみたくなるお話でした。


諸注意。

前よりもカップルラブラブ度は飛ぶ鳥を落とす勢いで下がっています。また、前作を読んでいないと話が通じないと思います。