童話物語/向山貴彦, 宮山香里


童話物語〈上〉大きなお話の始まり (幻冬舎文庫)

童話物語〈上〉大きなお話の始まり (幻冬舎文庫)

童話物語〈下〉大きなお話の終わり (幻冬舎文庫)

童話物語〈下〉大きなお話の終わり (幻冬舎文庫)


随分前に手にいれた挙句、前半だけ読んでほっぽっていたのですが、やっとこさ読みましたよ。




話は、不幸な境遇な挙句、性格の悪い少女「ペチカ」の元に、妖精「フィツ」が現れたところからはじまります。フィツは九日間人間を観察して「妖精の日」を起こすかどうか決めるのです。

で、まぁ、久しぶりに徹夜したお話でした。

何がすごいって、圧倒的な世界観です。細かい細かいところまで決められていて(なんたって、時刻だってこの世界と全然違うんですよ)最後に、大百科事典が付属しているのですが、それだけでおなかいっぱいの濃密なお話なんです。

で、また、舞台が魅力的なんですよ。塔ばかりで殆ど地面に足をつけない町や、設計ミスにより後百年で沈む水上都市とかっ!私の好みど真ん中です。

ただ、あまりに濃密な世界観ゆえに、ここもっと掘り下げないのぉ、と不満になったりしました。何でも、設定のうちでは、これは十巻ばかしある歴史物の二巻分だそうで…。うん、なら、諦めるしかないのかな…。

で、舞台設定が大好きなのはわかってもらったと思えますので、次は登場人物たちですね。

誰もが変わることができる、とか、一言じゃすませられないメッセージを含んだ作品ですので、実は感想はあんまりないんですよ。

と、いうのも、心の残るところも人によって違うだろうし、思い出深い場面も違うんじゃないかな、と。ちなみに私は、「ヤヤ」さんのセリフと行動に心を撃ち抜かれました。かっこいいんですよ、すっごく、すっごく、私好みの人なんですよぉ。後、ペチカの山中の生活も好きですね。リスがリスがぁ。後、塔の石碑に書かれてたこととか、忘れ物預かり所とか、えぇっと、すみません、何だかんだで上げるとキリがなくなりそうです。

上巻だけでは冷たく暗く救いなない感じ全開ですが、下巻から一気に明るくなります。

明るくなった分だけ、待ち受けているものは大変なのですが、それに立ち向かえるよう成長していってるってことなんだろうなぁ。下巻の前半は、漫才っぽいところが多くて楽しいのですよ。

もう、泣き所もあるし、どうしてもRPGっぽくなっちゃう(無限草原とかね)けれど、登場人物たちは揃いも揃って魅力的だし、守頭にいたっては……ノーコメント。Monsterみたいにセリフを一つもたがえずに映像化してもらいたい作品ですよ。

ファンタジーで世界観がしっかりしている分だけ、どうしても読む人を選んでしまいそうな本なのですが、好きな人はとことんはまれる話なんじゃないかな。

結構好きなお話です。きっと、年月経って読んだら、別の発見できるんじゃないかな、と思います。その時が楽しみですね。


それにしても、こんないい世界観なんだから、同じ舞台の話をもうちょっと読みたいですよ…。