ハムレット狂詩曲/服部まゆみ

ハムレット狂詩曲

ハムレット狂詩曲


狂詩曲、と書いて、ラプソディ、とルビあり。私はこの人の書く変態紳士(褒めてますよ)に奥底で中毒になっているらしく、時々無性に読みたくなるのです。




劇団薔薇』の新劇場の杮落とし公演に呼ばれた演出家と、主役のハムレットを看板女優の息子だからという理由で演じることになった少年の交互の視点で語られます。

演出家には、舞台に出る「片桐清右衛門」にふかーい怨みがありました。で、殺そうとたくらみ、ふふふふ。少年の方は、母宛の嫌な脅迫があってどうしよう、な話です。あてにしてはダメですよ。

この演出家が「小菊」という両性具有っぽい少年を天使だの何だと言うのですが…、「シメール」と比べると、読み流してしまいそうなほど、描写としては少なかったです。と、いうか、ミステリーが絡んでいる分、最後は現実的にならざるえない、という感じなので、このくらいが丁度いいのかな。「小菊」は逞しかったですし。最後には神秘性もなくなりましたし。ま、居ただけで満足しましょう。

で、この話、何と言うか……統一感がないんです。伏線の回収もあったし、流れもしっかりしています。けれど、別の話を作ろうとしたものを、チグハグに繋ぎ合わせた感じがするんです。建設中の舞台とか、嫌がらせの方法とか、少年の父親の事故とか、まだまだどこへでも転がっていきそうな様々なものを、ちまっ、と転がして終わってしまっている感じがしました。舞台を作っていく上の熱気とか文章から伝わってはきまし、私は舞台に疎い人間です、それでも…、それを1m転がるものを、50cmで止める理由にはならないんじゃないかなぁ…。そして、そういう転がりそうなものを転がさない情緒みたいなものも、私には感じられません。

同時に、その他のものを転がしつつの最後の落ちが、弱すぎました。この頃破壊力のある話ばかり読んでたせいなのでしょうが、それでも…はっきり言ってしまえば、ガッカリです。

せっかく人物表と、舞台の見取り図まであるのに、それが役立つ時もなくて…、私は超絶トリック的なものを余計に期待をしてしまいましたよ。

ハムレットに詳しければ、もうちょっと楽しめたかもしれません。それでも、あの有名なセリフ以外何も知らない私でも、役名をこんがらがることなく読めたので、詳しくなくても普通に読むことはできます。

舞台を作り上げていくさまは、緊張感があって面白かったです。(…まぁ、演出家が殺人計画に熱中したりなんか、するんで、それはどうかと思いましたが…ね)