きみの友だち/重松清


きみの友だち

きみの友だち


重松清の連作短編集。「きみと、きみにかかわりのある何人かの子供たちの話」です。



この作品、定年ゴジラや疾走と同じで、奇妙な視点によって語られます。主役を「きみ」と呼び、主役の内情もバッチリ描写します。
慣れるまで違和感がある視点ですが、慣れてしまえばこれが、すとん、と収まって気持ちいい文章になるのです。
一話目の「あいあい傘」で交通事故で一生松葉杖を手放せなくなった少女「恵美」が、この物語を繋いでいます。「あいあい傘」では事故で人を恨んでクラスから外されてしまいます。なおかつ、病弱な少女「由香」と大縄跳びの回し手に選ばれてしまい…。
この「由香」が「恵美」の、「友だち」になります。
そして、次の短編「ねじれの位置」は「恵美」の弟に視点が移ります。この短編で何にビックリしたって、「恵美」、強くなりすぎです。この話では大学生になっているのですが、弟から「姉ちゃん、変わってるだろ」と言われる始末。んでもって、大学生の「恵美」がかっこいいわけです。無愛想で滅多に笑わなければ口数が少ない。素晴らしいです。
この滅多に笑顔を向けない理由、最後らへんで明らかになるのですが「みんな」って、ほんとにひとつのまとまりになっちゃうんだなぁ、と、しみじみ思いましたよ。
後、弟と親友のコンビは、ベタベタにかっこよいです。
先の予想がついてしまっても、結局何の解決にもなっていなかろうと、うるっ、とさせるこの作者さんは、本当にすごいと思います。
全部で十篇(うち一つはエピローグ的なもの)なので、一編くらい好きな話を見つけることができるんじゃないでしょうか。私はとてもじゃないが選べない。
文句を言うとするばらな、エピローグ的な物語「きみの友だち」ですかね。確かに、ベッタベタに感動的なものではあるんですが、ここまですっきり終わらされると、逆に居心地が悪いのです。ひねくれているとは思うのですが…もっと、すっきりあっさり、の方が、私の好みでした。