ビンゴ/吉村達也


ビンゴ (角川ホラー文庫)

ビンゴ (角川ホラー文庫)


これも直感だけで買ってきた本です。それなりに分厚いのだけれど、けっこう早く読めました。



話は、山奥にある問題児の駆け込み寺的学校で、二十五人の全生徒が百物語をするところからスタートします。百物語が進むにつれ、突然の暴風により蝋燭がすべて消え、真っ暗闇の中、「リーチ」「ビンゴ!」の声が…。しかし、終わったあと、

それから、女子生徒のひとりが首吊り。さらに5×5に設置された机のあちこちに死の予兆が…誰かが、死の予兆が並んだら生徒が一気に死ぬという言い出した。そして、その言葉が真実に…。

ホラーのあらすじを書こうとするとどうも「…」で多くなりますね。

で、死の予兆が現れ始めた時に、ハカセと呼ばれる生徒とその恩師が百物語をした森を探索します。いやぁ、びっくりしました。考えてみると私が読んできたホラーは、いつもしとしとと忍び寄ってくる感じだったのですが、この本は、初っ端から幽霊大活躍です。吊り下がってみたり、パソコンに忍び込んでみたり、出てくる人々も少しの抵抗もありながら、すぐに肯定をはじめるので、むしろ私は実は誰かが仕組んだ悪戯なんじゃないかって、思ってしまいましたよ。でも、さすがに人がやるには無理なことを幽霊さん、バンバンやりまくるので、怖かったですよ。血走った白目だったり、有名ホラーのビデオから出てくる人思い出して、ちょっと背筋が寒くなったり。グロテスクな描写もスピード感があって、けっこう怖い。

ただ、この話、初っ端から飛ばしっぱなしなので、途中から恐怖はダウンしていくんですよね。むしろ、幽霊さんが影を潜めます。結局、ハカセとその恩師はたいしたことができずに森を去り、舞台は十年後に飛びます。そこで集まった同級生六人。あの幽霊は何者なのか、と知るために、廃校になった学校と森へ行き…。

ホラーになると、実は古くからいる幽霊だった、とか、お前らが聖域が荒らしたからだという理由でも十分に成立するのですが、この理由はちょっと面白かったです。推理する手がかりは何もないけれど、ミステリーっぽくて。予想もつかなったし、でも、しっかり筋道が通ってる。不可思議な現象もあるけれど、不条理なところはない。最後の最後の一文はどうかと思うけれど、きれいにまとまってて面白かったです。

ただ…、なんだかんだで結構人が死ぬので、とある人を気に入ってしまった私はけっこう悲しかったです。何も死ななくてもいいじゃないか。あんな少し人柄がよさそうな感動的っぽいエピソードまで付け足した挙句に…。ホラーに全員のハッピーエンドは期待してはいけないんですね…。人の死が悲しいほどに、この本の中にはいれました。