はい、こちら国立天文台-星空の電話相談室-/長沢工


はい、こちら国立天文台―星空の電話相談室 (新潮文庫)

はい、こちら国立天文台―星空の電話相談室 (新潮文庫)


本屋で見て、惹かれて買ってきた本です。私にしては珍しいことで、滅多に読まないタイプの本。国立天文台の広報普及室で働いて著者が聞いたり感じたり考えたりした、難問珍問、その他、天文の知識、いっぱい詰まった本です。(エッセイ…に近い、の、かな)




予想外に面白かったです!私は空を見るの好きですが、天文学の知識なんて小指の爪程も持っていません。著者は、国立天文台の広報普及室に電話をかけてくる様々なひとたちからの少し困った質問に答えていきます。小学生から「月が見えない」とか「春分の日はいつか」とか、時にはまったく天文に関係ないものまで。情け無いことに、私は時々月が見えないことも、春分の日が移動することも知りませんでした。その他、知らない知識がいっぱい、随分勉強になりました。とってもわかりやすくいて、目からウロコもんでしたよ。でも、知識がほしいのなら、専門的な本を見ればいいだけのこと、この本の面白さは、文体から滲み出る著者の性格だと思います。
天文学をやっている人のイメージは、どうもゆったりのんびりロマンチックな感じがしますが、この著者は最初のほうで「そんなことはない」と断言します。その言葉通り、この本から伝わってくる著者の姿は、短気な人です。
いえ、実際は毎日似たような質問に、せっかく専門知識を生かせずに答えていくことになったら、私はもっと短気になるでしょう。でも、著者が認めているんですもん。
ハッキリキッパリしてて、でも、どこかかわいらしい。後で著者の経歴みたら、70過ぎのおじいさまでしたが、やっぱり、伝わってくる感じがかわいらしい。ちょっと投げやりな感じもナイスです。あとがきで、もう文章書きたくない、っていう人は、なかなかいないでしょうさ。
丁寧に対応して、手紙があればきちんと返す。私は、国立天文台にこんな組織があることも知らなかったし、こんなにも丁寧なことも知りませんでした。
ものすっごく迷惑でしょうが、ちょっと電話かけてみたくなります。この本を読んだ後、電話をかけた人って、結構いるんじゃないでしょうか。今も働いている方、お疲れさまです。
直感だけで買って、大正解でした。