扉は閉ざされたまま/石持浅海


扉は閉ざされたまま (ノン・ノベル)

扉は閉ざされたまま (ノン・ノベル)


溜まった本を読んでしまおう、の休日をしています。この本も買ってきたまま読んでいなかったもの。前読んだ「BG、あるいは死せるカイニス」は面白かったのですが。



こちらも期待を裏切りませんでした。話は、とある古い洋館に集まった同級生。久しぶりの同窓会。しかし、そのうちの一人、伏見は殺人を計画しています。プロローグで犯行は成功。ご丁寧に密室を作り、後は何食わぬ顔をして、死体が発見されないように気をつけ、時間が経過するのを待ちます。犯人的には事故死で片をつけたいのですが、なぜ密室にするか、は、ちゃんと解明されるので大丈夫です。あぁ、なるほどなぁ、と思いましたよ。

で、この本の見所は、著者の言葉を引用するならば


「鍵のかかった扉を、斧でたたき壊す」

本格ミステリの世界にはよくあるシーンです。「そうではない」話を書こうと思いました。閉ざされた扉を前にして、探偵と犯人が静かな戦いを繰り広げる。この本に書かれているのは、そんな物語です。

と、いうことです。ひたすらに、開かない扉について、あぁでもない、こうでもない、と言い合って、その言葉の端々を拾って、最後にドンッ、と持っていく。前の読んだ作品でも思いましたが、この作者さんは言葉を大切にしますね。現在進行形か否か、とか。しかし、推理する「優佳」という女の子が、すごい。頭がいいを通り越して、怖い。この子の頭の中、どうなってるんだろう、と久しぶりに思いましたよ。

頭のいい二人が、互いに探りあいながら進んでいく話なので、途中で中だるみがありそうだなぁ、と思いましたが、それもなし。まぁ、でも、これは人によりますね。私には文体があっているらしく、気になりませんでした。後、頭のいいキャラがよく陥る、無意識からの上から目線も無くて良かったです。

だけど、この最後は…どうなんでしょう。はっきり言えば、脱力しました。別に筋におかしなところがあるとか、最後に破壊力があるとかじゃなくて、とりあえず、脱力。話の流れとしてはきれいに流れていくし、心理戦で飽きさせないのはすごいなぁ。けど、あの最後は、何か、気に入らないなぁ。いっそのこと、色恋沙汰(といっていいものか…)なしで、最後まで冷たい感じでいってほしかった。