おしまいの日/新井素子


おしまいの日 (新潮文庫)

おしまいの日 (新潮文庫)


この頃、旅行に行ったりしていて、読んだ本は溜まっているのでどんどん記憶が曖昧になっていきます。これは、電車の中で読んだ本。ちょうど読むのに三時間かかりました。

この話は「くますけと一緒に」と対のつもりで書いたそうなので、一応、くますけの記事はこちら



さて、この話は上で言ったとおり「くますけと一緒に」と対になっているそうです。「くますけ」は不幸な状態の子が、カラリとした文体で絆を作っていく話でしたが、この話は、むしろ、絆の崩壊の話。

筋は「春さんは今日も帰ってこない」(と、あとがきで作者さんは書いておりました)。確かに、まとめようとすると、こうなるしかない。主人公は結婚7年目。生活的にも裕福で、不幸なことなど何もない妻。そう、ただひとつ、旦那様が忙しすぎることを除いては…。いつもいつも帰ってくるのは11時過ぎ。しかも、浮気とかじゃなくて、本当に仕事で忙しい。妻はそのことが、とてつもなく心配なんです。でも、不満は漏らさない。自分たちの生活を守るため、旦那様は仕事をやっているわけだから、不満を言うなんてとんでもない。…と、こんな感じのが主人公の思考です。

話は、現実の描写と、主人公が日記の交換方式。

で、主人公はノイローゼ気味というか、旦那様が大切すぎて思いつめすぎたというか…。あれですね、妄想代理人の刑事の夫を待つ妻と似たような状況。(分かる人だけ分かってください)旦那様のために毎日夕食を作る。でも、旦那様はめったに食べない。そして、旦那が食べない限り、妻も食べない。旦那が帰ってくるまでは寝ない。

とはいっても、ほぼ日記の描写で進んでいくので、外側から見た異常さはそれなり、な感じがしました。分量分だけって感じで。

基本的に、狂っていく主人公と、巻き込まれた友人と、仕事が忙しすぎて何も見えない旦那、な人間関係。

この話、私の好きな要素がほとんど、というか、全然と言っていいほど、ないんです。主人公の共感できないのはそもそも共感を狙っての話でもないから別に良いのですが…、唯一まともな気がする友人(あだ名、おせっかいくーみん)に愛しさや好感が持てなかった…。理由としては、主人公の日記で進むので、その暗さとこの友人の明るさが、マッチしなかったから、かな。この人に好感が持てていたら、もっと印象変わっただろうに…。

他にも色々はあるんですよ、猫に愛着を持つ暇がなかったとか、いきなりSFっぽくUFOとか言われても困ったし、そもそも、流れが滞ってるとは言わないものの、どうも綺麗に感じなかったとか、旦那にどうしてここまで惚れていられるのかもわかんなかったし。(そういう意味では、過去のエピソードがあったほうが嬉しかったかも…)

ちなみに、最後もあんまり好きじゃありません。最後に2、3行はそれこそホラーらしくて、ぞくっ、とするものはあったのですが…、後味はよくありません。しかも、わざと後味悪く作ってある、と、いうより、こうなっちゃいました、な感じがしました。

一気読みをしたので、吸引力はそれなりにありますが、人に勧める気にはなれません…。