球形の季節/恩田陸


球形の季節 (新潮文庫)

球形の季節 (新潮文庫)


今回初めて気づきました。カテゴリーっていくつでも選択できるんですねっ。びっくり。一年以上書いていたのに、さっぱり気づいていませんでしたよ。これでカテゴリー分けが…むしろ、難しくなったりして……。
今回は、私的にはSFで、あらすじに「学園モダンホラー」とあったので、このカテゴリーで。




恩田陸の学園ホラーといえば、「六番目の小夜子」が一番有名なのかな。最初、てっきり小夜子に関係した話かと思っていましたが、それは「図書館の海」のほうだったようです。でも、雰囲気としては似通っている部分がありますね。
話は、とある東北の地方の高校で巻き起こったひとつの噂に事を発します。いわく「五月十七日にエンドウさんが宇宙人に連れ去られる…」。四つの高校の生徒が集まって作られた「地歴研」のメンバーはこの噂に興味を持ち、出所を調べはじめます。
視点がころころ変わって、主人公のいない物語です。でも、ダントツに可愛いのはみのりちゃん。この話の中で、私の一番目にお気に入りになった子です。何がかわいいって、そのシンプルな思考。ゆえに一番しっかりとしている。ちなみに、最後に締めてくれるのも、この子です。そりゃそうですよ、この子以外に締められたら、後味が悪くなっていたこと確実です。
話としては、最初は噂の出所を捜したりとかしているのですが、流れは恩田陸ですね、としか言えないです。「谷津」という街が舞台にまつわる、ホラー話と言ったほうがいいかもしれません。個人的に「金平糖のおまじない」がヒットでした。話の中でひとつのキーワードとして使われるのですが、あの小さな星のような金平糖がシャリシャリと音をたてて踏まれていく様を思うだけで、何だかドキドキするのです。謎解きとしては、結構実用的なことに使われてたりもするのですが、それを含めてこのキーワードは大好きです。こういうチマチマとした、用途不明の魅力的な小道具が好きな人には、雰囲気としては気に入るんじゃないかな。ただ、予感はしていたんです。読み進めるうちに、明らかに残り枚数が少なくなっていくのを、じわじわと感じていたんですよ。だって、恩田陸ですよ。もう名前が作風と言わんばかりの、恩田陸ですよ。…こう思っているのは、私だけなんでしょうか…。でも、恩田陸ですよっ。(もういい)
そんなわけで、スッキリとした終わり方ではありません。もっと読ませろよ、と言いたくなりますが、予感はしていたので、いまさら文句も言えません。雰囲気は好きなんですよ、そりゃぁ、これがリアルな少年少女かって言われれば、それは違いますけど、こういう街が存在しててもいい、と思わせてくれる雰囲気がいいのです。んー、何か含みのあるほのぼの、といった感じ。
ちなみに、この物語のある意味中核である晋少年。物静かだけれど芯の強さが素晴らしいです。いえ、好き嫌いが激しそうなキャラクターなのですが、何か、久しぶりに「かっこいいなぁ」と思いました。この、気に入らない人間ならば、溺れていようとも何とも思わないあたりが。
終わり方については賛否両論ありそうだけれど、私はけっこう好きですね。覚悟があったせいもあるのですが、恩田陸の本の中で、ずいぶんまっとうなみのりちゃんがいる事が、とても大きかったです。続編は絶対に望めないのですが、こういう雰囲気の本、もっと書いてくれたら嬉しいな。