窓際の死神/柴田よしき


窓際の死神(アンクー)

窓際の死神(アンクー)


死神に「アンクー」とルビがふってあるのですが、このアンクーってバンシーと同じなのかな。…島野にキスは…なんか、嫌だなぁ。



そんな前置きはさておいて、死神のお話、二編収録です。この死神は窓際にいる会社員「島野」。存在感があるようなないような、仕事も微妙なことをしているらしい人。

んー、一言で言ってしまえば、長台詞のお話です。この話を書いている時に著者に何かあったんじゃないか、と思いたくなるような話。基本的に主人公がいい意味で「ありきたりな人」(いえ、個性はあるのだけれど、この主人公二人の差は何か、って言われたら、私、答えられないので)なので、感情移入がしやすいそうなしにくいような…。ちなみに私は、感情移入できなかった方です。

一人は、好きだった人が婚約してしまい、相手の女の人の死ぬことを想像してしまう女の人。もう一人は、小説を書いているけれど、落選しまくっている女の人。

んー、話の筋といえば、この死神「島野」に出会って、「もうすぐ○○死ぬけど」と言われてしまい、二者択一を迫られたり、「運命って結構曖昧でねぇ」とさらりと爆弾発言されたり、主人公たちは色々悩みます。えぇ、そりゃぁ、悩みます。生と死のことですから、悩まなかったらさすがに読む気をなくします。ただ、ですね、一話目は友達の出現により、幸運の女神がどうのこうのになってしまって、結局、あの問いの意味はなかったんじゃない、と思ってしまいましたし、二話目は死神関係なくて、著者さんの意気込みというか、心理を反映しているようにしか思えないんです。

そういう意味では、力が入っているとは思います。やけに長台詞なのはそのせいだと思いますし。けれど、その力は引き込むほうでなくて、入ってからわかる凄さなんです。で、私は入っていけなかったんですよ。なぜか、と聞かれたら、そんな心構えなかったもん、としか言えないです。柴田よしきさんは私の中でどちらかというと楽しい話を書く人、という認識があったので…。その人の主張が入っていて、あんまり娯楽色がないのとは思っていなかったので…。うまく世界に入っていければ楽しいだろうけど、吸引力は感じませんでした。「島野」の性格もあんまり好みじゃなかったんだよなぁ。理屈っぽくて、想像力がないとは言ってるけど、だったらちょっかいだすなや、と思ったり思わなかったり…。ついでに、この「島野」がどうやって人間世界に馴染んでいるのか、という説明が一々長くて退屈でした。別に、認識を誤解されているのなら、それで良いんですけど…。

んー、読む時期間違えた。今度読む機会があったら、塩で喉を洗って、正座して読んだほうがいいのも。