アコギなのかリッパなのか/畠中恵


アコギなのかリッパなのか

アコギなのかリッパなのか


しゃばけシリーズの作者さんの現代もの。表紙の装丁が古くさいのでてっきり昔の本かと思っていたら、最新刊だったようです。…この表紙、あんまり好きになれないなぁ…。



さて、主人公は、引退した超大物代議士「大堂」の元に事務員として勤める「佐倉 聖」。腹違いの弟を養わなければいけない、21歳の元不良、現大学生。将来はお堅いサラリーマン希望。
さて、その元大物議員「大堂」は引退したはずなのに、若手議員の勉強会「風神雷神会」の会長をしてるものだから、わらわら不可思議な事件を持ち込まれて、それをせっせと「聖」が解決していきます。
謎は、毛色の変わる化け猫、後援会幹部が何者かに殴打された事件の始末、宗教団体へ入信の秘書が寄進した絵画の奪還、ダイエット中なのに太っていくボランティア…。「聖」は選挙事務所に連れて行かれたりと、政治に関わる舞台のお話なのですが、汚職とか横領とか、汚い部分はなくて好感。なおかつ、ちゃんと後の人間解決も丸く収めてくれるあたり、後味が良くていい感じです。「聖」については、お前、本当に21歳か、と思うくらいに世知に長けていて、謎を勿体つけながらも解決してくれるので、楽しいです。元不良なだけあって少々暴力的ですが、料理上手というよくわからない一面も。政治家の先生や秘書さんも、キャラが立っていましたよ。揃いもそろって、チャーミング。主人公をからかって楽しむ「加納」さんとか、大食い美人秘書の「真木」さんとか。ただ、畠中恵さんのことを考えると、結構普通の人々かも。まぁ…人間ですしね。でも、確実に主人公は周りから可愛がれ、少々乱暴に愛されています。露骨な描写はなくても、一々雰囲気がほのぼのしているんですよ。漫才のように。やってることが喧嘩だろうと、殴打事件だろうと、関係なしです。
後、何が楽しいって、皆さまが確実にたくましいこと。政治家はタフでなければやってられない、と主人公が度々思うとおり、本当にそうだと思います。謎の解き方、というか、後始末の仕方に少々強引さを覚えたこともありましたが、皆さまたくましさに、すぐ忘れてしまいましたよ。
弟についての描写があまりなかったので、てっきりそこで一ネタ仕込んでくるかと思いましたが、これは肩透かし。それがちょっと残念でした。
この作者さんは現代ものになると、微妙に文体が硬くなるのが不思議なのですが、こういうのもいいなぁ。まだ読みたいので、続編希望。