Sweet Bule Age/有川 浩, 角田 光代, 坂木 司 他


Sweet Blue Age

Sweet Blue Age


気になっていたアンソロジー。私が好きな人がこれだけ揃ってりゃ、嬉しい悲鳴も出るってもんで。




題名どおり、色々と青い話が多いです。青春、も勿論キーワードなのですが、ま、何とも言えず「Sweet Bule」。

「あの八月の、(角田光代)」は夜中に学校に忍び込んだ、女性二人。昔の青春時代のフィルムを取り出して、鑑賞会をするのですが…。うん、青春だ。しかも私が感じるのより少々古臭い青春です。フィルムの中の人物たちは、人間関係って面倒だなぁ、と思ってしまうほど、ややこしい人間関係の中で生きているくせに、妙に輝いているのは、眩しいやら恥ずかしいやら…。んー、多分、この感覚を理解するのは今のところ難しい。読むのが後五年後だったら、もっと共感できるかもしれません。

「クジラの彼(有川浩)」は、一言言わせて下さい。相変わらずです。相変わらずって言える程読んでないですが、人づてに聞いた別の本の事と、似たようなことをやっています。でもですね、それが素敵なんですよ。一瞬王道外しかな、と思うのですが、実は王道ど真ん中+軍、です。この人が書く女の人は強くて逞しくて素敵。そして男は妙に魅力的。ライトな口当たりで面白い。ベッタベタが素敵です。

「涙の匂い(日向蓬)」知らない人です。都会から田舎に引っ越した女の子と、その周りの話なのですが、訛りがバシバシ出てきます。こういう田舎臭さはどうも自分の所と比べてしまって「んー」と思ってしまうので、どうも世界に見事には入りこめはしなかったです。ただ、この話は普通の青春小説とはちと違います。こんな後日談がついている、ってのは珍しいんじゃないだろうか。まざまざとしたリアルと、居心地の悪さの描写は一番でした。だから、後味スッキリとはいきません。だからこそ「青春」だしなぁ…。

ニートニートニート三羽省吾)」知らない人二人目。えっと、ですね、とりあえず長編を書きませんか。あぁいう終わり方だからこそ「Sweet Bule」なのだとは思うのですが、何というか、何というかっ…、物足りないんです。喋って欲しい人もいるのに、どんな風になっていくのか見てみたいのに。奇妙な閉塞感を存分に味あわせてくれたので、それがもっと解放されるのを見てみたいっ。この本の趣旨ずれまくるだろうけど、さ。文体的にはあまり好きな類ではなかったですが…気になる人になりました。

「ホテルジューシー(坂木司)」ちょうど、今坂木司さんの話が一番合っているよう。すらすら読めるのです。そして、話は沖縄へバイトで行った女の子の物語。「クジラの彼」とは別の方面で明るい話です。閉塞感があまりない。まとまり方もいい感じだし、こういう人情ものに弱い時期なのかもしれません。沖縄っぽさといえば大らかでいい加減な人が出てくるだけなので…それだけは少し残念かな。

「辻斬りのように(桜庭一樹)」とある事情で詳しい感想はなしで。単品で読むと、独特な雰囲気とうすーく混ぜられた毒が素敵。んー…これだけでも十分成立…してるかどうかの判断が出来なくなってしまった。あ、ただ、次に控えている作品を考えると、この並びは正しいな、と思います。

「夜は短し恋せよ乙女(森見登美彦)」同名の小説がただいま大ヒット中、なのかな。そうなると、あの本は短編集なのか。この単品で読むと…あぁ、ファンタジーノベル大賞の人だぁ、と思いました。いえ、この独特な感じの表す時、そうとしか言えない…。不思議な文体をしています。個人的にSFちっくだな、と思うのですが、どうなんでしょ。話の内容は…すごいです。眠い時に読んだので、頭がついていけなくなりました。ほのぼのしてるけれど、その奇妙な世界観は十分にSFですって。情けない男が素敵です。大ヒット、ということで身構えてしまったところがあったので、素直に楽しめなかったところも…。こういうのが今受けているのかぁ、という事に対する驚きが先行しました。気になる人ではあるので、もっと別のも読んでみたいな、という気持ちにはなりましたよ。

さて、全体を通してみると、共通点があるようでない、ないようである、不思議なアンソロジーですね。一番多く感じたのは閉塞感や、それに対する居心地の悪さ、または反発ですが、それは極単純に数が多くて「障u」に共通するイメージだからかもしれません。でも、とても個性が強い人たちが集まった感じがします。どこかが似ている話がないのです。私は知っている人が多かったですが、どちらかというと反対の方がより楽しめるし、世界が広がるかもしれません。