少女七竃と七人の可愛そうな大人/桜庭一樹


少女七竈と七人の可愛そうな大人

少女七竈と七人の可愛そうな大人


既に外見から独特な雰囲気が漂っている本で御座います。「Sweet Bule Age」に載っていた短編「辻斬りのように」にから派生した物語…なのかな。何も知らずに本を開いたので「辻斬りのように」が目に入った途端、驚きましたよ。ただ、手元に「Sweet Bule Age」は既に無かったので、比べられなかったのが残念。
「Sweet Bule Age」の記事はこちら
※「Sweet Bule Age」の「辻斬りのように」の完全なネタバレを含みます。要注意。


さて、話は「辻斬りのように」で登場した女性の娘「七竃」にまつわります。えぇっと、この「七竃」はものすごい美人です。例え、本人がしゃれ気も何もない格好をしていようと、全員が振り返るほどの美人。そして、同じく美人の「雪風」とほぼ毎日のように「七竃」が作った鉄道模型の世界を見つめ続けるのです。
美人だと書きましたが、どうも違和感があるのがこのストーリーの独特さが現れますね。出てくる言葉に「かんばせ」があります。「このかんばせが…」と。そして「異形の面」である、と。「七竃」は自分の顔を誇ろうとはしない。「雪風」が「七竃」の特殊な顔になった理由を言う度に「七竃」は嬉しそう。
一々挙げていくと偉いことになりそうだけれど、雰囲気が独特です。静謐で、北海道の雪とよく似合っています。んー、感想を書くのも評価するのも難しい。比べられるものがないんですもん。面白いわけじゃない。でも、特別ここが素敵っ、と断言できる代物でもない。話は淡々と、それでもどんどん動いていきます。犬のパートは心のオアシスです。「雪風」と「七竃」に流れる雰囲気は独特すぎて、ずーーっと読んでいると疲労するので。
幾つかのパートに分かれているのですが、五話目の「機関銃のように黒々と」が一番好き。「雪風」パート。読み終わってみると、話の筋は理解できても、何を言いたかったのかを理解するのが難しい。ただ、本を閉じた後もずっと「七竃」「雪風」とお互いを呼び合う二人の声が響きました。うん、私はこの二人の関係性が気に入ったんだな、と思います。とても静かな関係が。故に第五話が一番印象深い。ついでに、五話目あたりはまだわかりやすいですよ。
あ、途中で後輩が登場しますが、可愛いです。最初は何だこの子、と思いましたが、ま、それなりに普通の子なので、理解しやすく、そして、とても行動が可愛い。一番客観的で感情的な意見を持ってた子なんじゃないだろうか。一番感情移入できたのは、彼女でした。ちなみに、彼女が感じた歯がゆさは、もしかしたら私が今この本を読んで、それに対して感じている歯がゆさを似ているかもしれない、と思ったり。犬もいますが、感情移入など色んな意味で、別。もう一度読み直そう、と思わせてくれる本ですね。多分、もう一度読み直せばもっと感じられるものがあるかもしれない。そんな淡い期待をもたらしてくれる。ただ…ゆっくり読みましょう。後、体力がある時に、それだけは注意です。