レオナルドのユダ/服部まゆみ



ミステリーなのかなぁ、と思わず思ってしまうのだけれども、後ろに「歴史ミステリー」に書かれているので。他に思いつかないし。




さて、私はこの人の変態紳士(褒めてますよっ)が好きなのです。あまり本を書いてないようなので、ついにこの分厚い本に手を出すことになりました。いえ苦手な分野かな、と思って嫌煙していたのですよ。でも、読んでみると思いのほか楽でした。私はレオナルド・ダヴィンチの「最後の晩餐」の凄さなんてさっぱり判らないのですが、最初のほうで登場してくる貴族の坊ちゃん「フランチェスコ」とその付添の「ジャン」がレオナルドのことが大好きで、その凄さを永遠と語ってくれるので、少々お腹いっぱいになりつつ納得するしかないです。それと、この本に登場する「レオナルド」はもうすっかり年老いた頃なので「レオナルド」の内面を探る、というより、その周りの人々について描き出している感じです。いえ、十分に「レオナルド」のもうどうしようもないほどの優しさとか良い人っぽさとか、天才っぷりは伝わってきますよ。何だこの人、と思うくらい。

ただし、私は読み方を間違えたなぁ、と思います。チマチマと間をあけながら読んでしまったので、いまいち世界に入り込めなかった。それと、地図と歴史が頭に入っていないので戦争と権力関係の文章は殆ど頭を素通りしていきました。ごめんなさい。わかりません。でも、途中で登場する皮肉屋でレオナルドが嫌いな「パーオロ」さんはその空回りが素敵でした。レオナルドに会いそうになる度に緊張したり、とか。

えぇっと…ですね。なんだか軽薄な文章になってしまいましたが、内容はかなり世界観がしっかりしてます。何というか、空気から既に向こう側の世界にある感じ。だからこそ、そのまま現実世界にあったら恥ずかしさのあまり穴に埋まってしまいたい、と思われるほどのセリフや褒め言葉でも違和感なく受け入れられる。それって、すごいですよ。話の内容的には、まぁ、細切れに読んでいたのでなんとも言えず。そもそもレオナルド自体にさして興味がないので「へぇ」としか思えず。ただ、盲目的な「フランチェスコ」は可愛いを通り越して、怖くなって、可愛くなって…が、繰り返されます。個人的には「ジャン」に幸福になってもらいたいのですが…一体どうなんだ。

あ、一応「モナ・リザ」の謎について迫る、とのあらすじですが、あまり「モナ・リザ」の影は濃くありません。そもそもミステリー要素は最後らへんに凝縮されている感じ。「レオナルド」って凄いよね、が最終的な感想です。最後にはこの作者さんらしいところもあるし、満足。