ひかりのまち-nerim's note-/長谷川昌史 〆


ひかりのまち―nerim’s note (電撃文庫)

ひかりのまち―nerim’s note (電撃文庫)


設定に惹かれて手に取った作品。電撃小説大賞「金賞」受賞作。なのでデビュー作…なのかな。
*少々のネタバレを含んでいます。先入観なしで読みたい人は注意。



話は山々に閉ざされた町「パラクタ」が舞台。そこは一定期間、夜だけが続く「日黒期」が存在してます。高等部に通う主人公「ネリム」は政治家の父に反攻しつつ、六年前に起こった兄とその仲間の失踪事件について疑問を抱えています。で、まぁ…女の子の友人がいたり、その子の可愛い弟が居たり、怪しい保険医が登場して「本当のことが知りたい?」などと言ってくるのですが…、それはひとまず置いておいて、世界観がとても素敵です。一日中夜が続く、というのはまぁ、それなりに聞く設定だとはしても、小道具と政治闘争の絡み具合が良いのです。個人的に、振るとゆっくりと文字が浮かんでくる時計がお気に入り。いいわぁ、欲しいわぁ。
で、話はけっこう激しめです。結構死人や怪我人が出ます。というか…実のところ、途中で主人公と保険医が男女関係にあっという間に発展するかと思う間もなく、あっという間にやることやっちゃいます。いえ、ビックリしました。お前らどこの昼メロだ、とまで言いたくなりましたよ。「ライトノベル」って事がどうしても頭にあったので、心構えが全くなかったんですよ。いやぁ…ビックリした。読んだのがそれなりに前なので、驚いた時の印象だけが残ってしまっている。けれども「ライトノベル」でやられると違和感が…。なんとも言えぬ心のつっかえが…。
以下、ネタバレ要注意。
話の筋は、黒幕ありどんでん返しっぽいのあり、でなかなか楽しいのですが…どうも主人公の兄の性格が掴め切れなかったのが痛かったです…。あいつ、結局何なんだっ、そりゃ敵味方で簡単に分けられるもんじゃないだろうけど、ヒールならヒールらしくせぇっ。裏切りたいんだか、助けたいんだか、よくわからない。というか、もし心変わりしたんなら、早すぎやしないか、心変わり。というか、主人公もいいのか。その男、一応殺人犯なんだけど…。…なんとも言えぬ気分になりました。何だろう。保険医との昼メロっぷりに驚きすぎて、感情移入しなかったのが問題なのか。心理とか読めなかったのが本当に痛い。というか、主人公の兄の最初の登場の時が私のツボ過ぎて、外れていったのが悲しかったの…かな。
作者さんは続編書くつもりがあるような感じなのですが、個人的にはこんな個性的な世界観の話をもっと書いて欲しいなぁ、と。