夜の公園/川上弘美


夜の公園

夜の公園


「夫婦」を軸に置いた連作短編集、なのかなぁ。きっちり分けられては居るのですが、それが一つの話としての独立なのか、ただ単なる章分けなのかが判別できなかったので。んー、視点は順々に繰り返されてはいくんだよなぁ。ぱっと見は連作短編です。




話は一組の夫婦と、その愛人たちの物語。いや、愛人って言い方が悪い。どうも登場人物たちに「浮気をしている」という意識が希薄なので、ならば「恋人」の方が正しいのかなぁ。桃色空気もさした漂っていないですが。登場人物は少し無邪気な「リリ」。その夫「幸夫」。リリの友人で幸夫の恋人の「春名」。リリの恋人の「暁」…が一応題名に載っています。んー…この話を読んだ感想を一言で言うのならば「わかんない」です。私はこの話を読んで作家の性別に迷う人は居ないと思い。それくらいに感覚の捕らえ方が女性的なんです。ところどころで曖昧で、ところどころで妙に冴えて、そして冷えている感じ。

話のストーリーだけを取り出してしまうと、結構どこにでもありそうな感じに仕立て上がるのですが、やっぱりそこに絡む感情が細やかで繊細で、だからこそ私には「わからない」。「リリ」に至っては自分の気持ちの曖昧さをほっとく感じがします。

簡単な文章でたっぷりとした間合いが取られているからか、むしろ難しいのです。いや、だってさぁ…上の四人が一同に出会う場面があるのですが…別にそこで言い合いになるわけでも、感情がぶつかり合うわけでもない。何か黒いものが湧き出てくるわけでもない。多分、どうにもこうにも色んな意味で優しい人々が多い話なので、だからこそ何も無かったの如く振舞えてしまうって事なのでしょうが、それでも…なぁ。

この居心地の悪さはきっと私の知っている「普通」と食い違うからです。浮気されたら怒るだろう、というどうしようもない思い込みから。勿論、怒らない理由もちゃんとあるのですよ。というか、怒ったら怒ったでそれこそ「わからない」。

時間は問答無用に流れていきますし、関係も変化していきます。で、ちょっとした事件も起こります。この終わり方は何なんだろうなぁ。視点の持ち主がぐらぐらしていたのと、私に最初っから「理解」する気がなかったからか、別になんとも思えなかった…。わからなさすぎる。これは、確実に私側の問題です。


…恋愛経験積んで出直してきます。