五分後の世界/村上龍


五分後の世界

五分後の世界


恐らく有名作品。SF…なのかは実のところ判断を迷うのですが出来る限り「その他」を活用したくないので。密やかに村上龍を楽しもうキャンペーンを実施していて、ついに手を出した次第です。




話は一人の男が妙な世界に迷い込む、というもの。その世界は確かに男が生きていた地球なのだけれども、歴史が歩んだ方向がまったく違うというもの。とはいっても男は最初の頃は「何が何だかわかんない」状態からのスタートのまま、状況を正確に理解するのは真ん中あたりです。ただ、それ以前に永遠ブッシュの中を歩いたり、戦闘をしたり、とそれどころじゃねぇ、感じにはなっているのですが。
ストーリーはひとまず置いておいて、この本、最後の一文の鮮烈さに痺れました。そういう事かよっ、とちょっと叫びたくなるくらいに。確かに、確かに、男はずーっとそんな感じで歩んでいきますから、それを選ぶのも当然なのでしょう。だけど、まざまざと見せ付けられると良い悪い置いといて眩しいなぁ。何だかここらへんを深く考えると、ただ単なる愚痴になりそうなのではしょります。
個人的に音楽家の「ワカマツ」と「ミズノ少尉」が好き。登場人物はかなりの数にのぼるでしょうが、印象に残っているかはまた別問題なのだろうなぁ。一部、名前すらも覚えていないけれど一瞬の描写が頭に残っている人、というのも居ますし。未だにリップクリームが頭をよぎるってどういう現象だ。
戦闘シーンがかなりの量を誇っているのですが…、うん、人が動いて内はまだ分かるんだ。さっきまで話をしていた人があっという間に敵弾に倒れたりとか、その鮮やかさはわかる。でも、武器の名前が出てきた時点で想像力の限界が来ました。戦闘シーンなんて滅多に読んだことないし、それに武器やら軍が絡むと私の許容範囲を超えるのです。ロケットランチャーってどんなの、って世界なので。勿論、主人公である男も少し裏の世界に浸っていたっぽいですが、一応は日本人なので躊躇います。でも、すぐに理解します。…主人公の適応力は恐ろしいものがあると思います。一部付いていけないよ。
後、印象的だったのは、和やかな家族の食卓とか、ワカマツのコンサートとか。この作家さんの文章は何となく変則的なリズムを持っているので、たまに引っかかります。ワカマツのコンサートについては、面白いけれど長かった。息切れするから、こっちが。
死刑宣告に近かったところから、男はどんどんと認められ、その存在が認知されていきます。まぁ、読み方は幾通りもありそうだけれど、結構この「存在の認知」ってのが大事なのかもしれない。吸引力にもむらがある作品なので、超絶的におススメ、とは言えません。戦闘シーンが好きなら良いかもです。