愚者のエンドロール/米澤穂信


愚者のエンドロール (角川文庫)

愚者のエンドロール (角川文庫)


古典部」シリーズ第二弾。ちなみに、第一弾の「氷菓」の記事はこちら 。第三弾「クドリャフカの順番」の記事はこちら
さて、もしこれに煽り文をつけるとしたら、「省エネ主人公、ちょっとやる気になる」でしょうか。最近読んだ本の影響が、モロに出ております。




さて、話は「女帝」こと「入須冬実」という女子生徒から、自主制作映画を見てくれるよう頼まれたことから始まります。その映画はとあるクラスが作成し、文化祭にて上映される予定だったのですが、映画では、廃屋の鍵のかかった密室で少年が腕を切り落とされ死んでいるところで終了。しかし、シナリオ書きの「本郷」が病気になってしまった。そこで、映画を見て、「本郷」の意図を組み、この密室殺人を解決してほしい…というのが依頼です。「私、気になります」の一言で、省エネ主人公を動かしてしまう「千反田エル」は相変わらずすごいなぁ。というか、このシリーズは女性が強くて素敵です。
しかし、探偵役を任されることに躊躇いを覚えた主人公に「女帝」はほかの探偵、三人の話を聞き、成否を判断する、という折衷案を提示します。話は大体、この三人の話を聞き、あーでもない、こーでもない、と言っていくのですが…。この作者さんは「青春ほろ苦」という代名詞が、本当に良く似合う。謎の解き方は、スッキリしつつも驚かさせられて、いい感じでした。「女帝」に押されてからか、他の方々のキャラが出てなくて残念でしたが、それは「クドリャフカ」が楽しすぎたせいかな。すんなり読める、という点では、良いのかも知れません。それと、今回気づきましたが、説明の比喩がわかりやすい。読んでて嫌にならない文章をかけるって、すごいなぁ。
そんな風に謎解きもいい感じなのですが、もうひとつの見所は「女帝」によって、やる気になってしまう主人公です。省エネ体質が改善されているのかと一瞬思いましたが、「クドリャフカの順番」で逆戻りしていたので、「女帝」はすごいってことですね。このシリーズ、続くだけ続いて欲しいのだけれど…、文化祭も第三作目で終わってしまったので、この次ってどうするんでしょう。ま、それを楽しみにしつつ、次作(正確には次々作)を待ちます。