異形家の食卓/田中啓文


異形家の食卓

異形家の食卓



ホラーに分類すべきかどうか迷ったのですが…、まぁ、他にいいようもないな、もっと細分化するのならば、グロテスクホラー。八つの短編と間に連宅短編四つの構成。R-12でもつけたい気分です。

*短編のひとつ「にこやかな男」のネタバレを含みます。注意。




あぁ、もう、濃いなぁ。この前に「シュプルのおはなし」を読んでサッパリしていた所だったので、この豚骨のスープの如き濃さは結構体にこたえました。実際、一番最初の「にこやかな男」を読んでいる時点で、少しクラクラ…っと。痛いです。グロイです。それが持ち味なので、ある意味、とても楽しんでいたのかもしれませんが…。ま、「にこやかな男」の描写がきつかった理由としては、暴力?を与える相手が生きていて、なおかつ無抵抗で、なおかつ、与える暴力の想像が容易についてしまったからですね。リアルなんですよ、手順までしっかりしてるし。ただ、あそこまでやられて何で生きてるのか不思議です。…意外に丈夫なのか、やり方が熟練しているのか。あぁ…思い出しただけでクラクラっと…。最後のぶっ飛び具合で、少し復活。派手になれば、平気みたいです。
でも、最初はそんな感じでしたが、慣れていきます。それもどうかと思わないこともないけれど、読み進んでいけば慣れます。先天的にダメな人は、どうやってもダメでしょうが、楽しめる人はとことん楽しめるんじゃないかな、と。基本ブラック。基本救いなし。基本グロい。基本容赦なし。時々駄洒落が入る。途中から楽しい感じのゾクゾクが背中に来てましたから、私も結構楽しめたみたいです。かなり、癖が強いかなぁ。あのグロさを書くためにこの話があるんじゃないか、と思わないこともないですし。
特に面白かったのは「新鮮なニグ・ジュギペ・グァのソテー。キウイソース掛け」「怪獣ジウス」「塵泉の王」
一番好きなのは、最後の「塵泉の王」かな。多分、一番グロい描写が少ないです。この設定で、別の長編が書かれていたら楽しそうだなぁ、と。「怪獣ジウス」はいい感じにぶっ飛んでいて良いです。これでこの人の話を読むのは二冊目なのですが、どうもぶっ飛んだ設定や、SFちっくなのが私の肌には合うよう。うん、そこらへんを攻めていこう。
間に挟まる「異形家の食卓」という連作短編があるのですが、最初に「おい」と思ったきり、ある意味、異形家の食卓がとても楽しそうで、面白かったです。ぶっ飛びっぷりが素敵。あそこまで平然と語られた上に、駄洒落を連発された日にゃぁ、良い悪いの判断の前に、平身低頭、参りました、です。
他にも、恐らく同一生物と思われる奇妙な生物が短編のところどころに現れるのですが…、結局、何だったんだろう。他にも同じだと思われる宗教が度々登場します。…何だったんだろう。読み返せば、何かしら答えが見つかるのかもしれませんが、今のところその体力はありません。えぇ、ものすごい勢いで体力を奪われました。だって、濃いんだもの。癖が強いんだもの。グロイんだもの。褒めてます。
とりあえず、濃い。もう、お腹いっぱい。注意点としては、体力がある時に読んだほうがいいですよ。深夜に読み始めて、体力奪われるわ、熱中して眠れないわ、本を何とか閉じた後も、心臓脈打ってるわ、で、次の日結構大変でした。短編全部を合わせての世界が、得意な人にとってはかなりの吸引力を持つので、要注意。
あぁ、でも、面白かったぁ。体力回復したら、またこの人の本を読もう。


「グロい」やら「癖が強い」だの、言葉を抜け出すと、褒めてるように聞こえない感想ですが、全部褒め言葉です。あ、ちなみに、愛やら恋やらの無いエロもあるので注意が必要…かな。